掃除に学ぶ

1-5 ~己を育てる~

己を育てる

若者の値打ち

 最近の若者はさっぱり役に立たないと評判が悪い。

 「耐えることができない。」
 「すぐ諦める。」
 「指示がないと動けない。」
 「なんでも人の所為にする。自分は少しも悪くないと思ってる。」
などなど、今の若者は救いようがないほど四面楚歌です。

 ほんとうに役に立たないのか。

 ほんとうは役に立っているのに、そのように見えないのではないか。

 いつも若者だけが指弾されるが、上に問題はないのか。

 いつの時代も見る角度を変えれば若者は活力に溢れ素晴らしいとわたしは思っています。また存在するだけで価値があります。

遅刻ゼロに変身。

 遅刻常習犯のA君が、一念発起し同僚とともに早朝掃除をはじめました。遅刻の理由は単純で「朝寝坊」であり「体調の不良」であり、「交通渋滞」です。

 毎日5分だけ早く起きる。たったそれだけの決意で、半年たたない間に40分も早く起きれるようになりました。

 A君は、早朝掃除で中央分離帯の両脇に捨てられてある煙草の吸い殻拾いを担当しました。5分早く出勤すれば、五分だけの清掃快感が味わえます。しかし5分の吸い殻拾いの範囲はたかがしれています。

 すぐにそれでは物足りなくなり、本能的に次に進みます。より多くの爽快感を味わうためには少しでも自分の清掃エリアを広げるよりほかには方法がないことを自ら知ります。

 5分が10分になり30分になり、やがて40分になるには、さほど時間は要りません。

 その結果、「朝寝坊」はなくなり健康そのもの、もちろん無遅刻無欠勤。多くの称賛を浴びながら自らを光らせることになります。

 若者は忍耐力があり、そして勤勉です。A君は、日々の掃除でたゆむことなく己れを育てています。

手抜きをしない。

 若者にかぎらず誰しも仕事の上で心ならずも「手抜き」をすることがあります。

 手抜きをすれば手がかかる、ということを知りつつおこないます。

 要領のよいB君は、典型的な手抜き人間でした。

 B君はA君の一念発起に刺激されたかのように、早朝掃除に参加をはじめました。

 指示命令でやらなければならない掃除は苦役でしかありませんが、自ら進んでおこなう掃除は一味違います。B君の担当は、会社を挟んで南北のバス停掃除です。

 はじめはいい加減でも、回を重ねるごとに周囲のゴミの存在が許せなくなる。いきおい丹念になります。

 雑な自分が許せなくなり、丹念に掃除する自分を誇りに思うようになります。

 掃除はつまらないことのように思われています。掃除にまつわる蔑視語などもたくさんあり、嫌がられています。

 B君はいつのまにか人がつまらないと思っていること、人が嫌いだと思っていること、それをごく当たり前のこととしてできるようになりました。もはや手抜きはありません。

 若者は骨身を惜しまない。そして明るい。B君も、掃除で己れを育てています。我が社の全社員による早朝掃除活動は、ダメといわれる若者によって支えられ、日々休むことなくまもなく8年目に入ります。  

(96年11月)