掃除に学ぶ

巻頭言

掃除でこころをみがく    鍵山秀三郎

「ザーッ、ザッ、ザッ」
「カタッ、カタカタッ、カタッ」

 学校内のあちこちから音が響きます。

 いずれもトイレ付近から、熱のこもった声や息吹とともに伝わってくるものです。

 これは〔日本を美しくする会〕の研修に参加した人たちが、会場にお借りした学校のトイレで、便器や床に永年の間に染みついた汚れを取り除こうと、一所懸命励んでいる音が廊下まで聞こえているのです。

 トイレの中では、さまぎまな階層の人たちが、便器を抱えるようにしたり、頭を便器に突っ込んだり、あるいは床に這ったりして黙々と自分の持ち場を磨いている風景が見えます。かたちは様々ですが、取り組んでいる姿勢とやる気満々の気迫は共通しています。

 リーダーの明るい掛け声に、素早く応えるチームワークは、今日はじめて出会い、はじめて組み合わされた人たちとはとても思えない見事なものです。

 掃除に掛ける時間が二時間と聞いて、はじめての人は、「何故トイレ掃除にそんな長い時間が必要なのか?」 と、不審な顔をします。しかし、実践してみるとこれでも時間が足りないことに気づかされます。

 特に終了前20分くらいになると、それまで全く目に入らなかった汚れに気づき、これだけは何としても取り除き、美しくしたいという思いに駆り立てられるのです。

 時間内に思い通り綺麗にできたときは、心ゆくまで満足感を味わうことができますが、どうしても汚れが取れなかったときなどは、後に心を残しますものの、実はこのときにたくさんの学びがあるのです。

 それは与えられた場所を磨くための段取りや取組み姿勢の甘さ、清掃過程における心の隙間、限られた時間の杜撰な使い方、などなどが、次から次ぎへと浮かんできて反省することの多いのに驚かされます。

 この運動に参加して多くのことを素直に学べるのは、善友のなかに身を置いて、絶対肯定絶対安心の世界に入るからだと思います。

 参加の回数を重ねる度に、前の経験が活かされ、自らの成長に止まらず、周囲の人と共に成長していける素敵な会だと思っています