<出会い>に学ぶ生き方の極意

No.1 ~人生の転機は、すべての人に必ず訪れる~

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高齢化社会の狭間で思う

 全人教育の研究・実践の泰斗-森信三先生は「人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに…」と。喝破された。

 古希を目前にした今、あらためてその言葉の重みを噛み締めている。

 昭和十二年生まれの私は来春、六十九歳になる。長寿社会の現在では珍しくもないが、日本流の数え年なら「古希」に達する。まだ若いつもりでも「古来稀なり」の年齢に到達すると思えば、実に感慨深い。

 
 先日も郷里に関係の深い集まりに出席すると、近況報告を兼ねて若い頃の思い出と健康に関する話で持ちきりだった。ところが残念にも、どこからも未来の夢物語などは聞こえてこない。第一線の表舞台から退いたとはいえ、なお現役を自負している私にとっては場違いな思いさえした。気も萎えるばかり。
 

 過疎化する郷里の現状を憂えて、活性化への道を探りたいと語り掛けても、興味を示して耳を傾けてくれる人も少ない。各自とも我が生活で精いっぱいなのだ。貧しくて困っているのではないのに、他事に関心を向ける心のゆとりさえないのか。

 同日、別の会合に参加した。高齢者中心の集いだったが、すこぶる元気にあふれていた。話題は地域の活性化や生きがいなど、将来を描く建設的な意見が主流。ようやく自分の居場所を見つけた感じだ。
 

 それぞれ人の生き方の差は、どこから生じるのだろうか。結論を先に述べれば、冒頭の森先生による教えが示唆する「出会いのご縁の生かし方」にあるように思えてならない。

 乏しい経験ながらも、人のご縁の不思議さ、ありがたさ、そのご縁の生かし方についてお伝えしたい。 

巡り合わせの不思議を体験

 間もなく団塊の世代が定年を迎える。戦争を知らない、貧困を知らない、畏れも知らない世代が、どのような老後を過ごすのか、実に興味津々で注目している。

 〈縁〉なるものはよく考えると不思議な存在といえる。天は誰にでも同様に「一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに」良縁を与えている。

 だが、縁に気付いて生かす人、気付いても生かせない人、全く気付かない人― に三分される。それは知識や能力に関係なく、その人の持つ天与の感性のなせるすべであろうか。

 私は還暦を控えた平成八年に、次々と素敵なご縁に恵まれた。もちろん、それまでの歩みの中でも、たくさんご縁を受けていたに違いないが、残念ながら気付かなかっただけと思う。ともかく、まさに生き方を大きく変えることになった時機である。

 具体的に述べると― 。同年二月、那覇市内で開かれた「沖縄掃除に学ぶ会・全国大会」で、この後ずっと「生涯の師」と仰ぐようになった鍵山秀三郎さん(当時はイエローハット社長・創業者)と出会い、トイレ磨きを共にするご縁をいただいた。 「トイレを磨いて心を磨く」なんてまやかしだと思っていたが、その小さな行いの奥深さと偉大さに触れる。私の掃除道修行の契機となった。

 同年六月、広島市内で開催された「はがきまつり」に参加、坂田道信さん(複写はがきの提唱者)の絶叫講演を拝聴させていただく。森先生のご縁に連なる坂田さんのはがき道に懸ける一念に、心底を揺さぶられる感動を得た。「はがきを書き続けると人生が良くなるよ!」と教示され、即刻、はがきを書き始めた。

生き方まで変える出会いが続く

 同日、「はがきまつり」の交流会で、森先生の教えを社会に広める活動に生涯を捧げておられる寺田一清さん(実践人の家・常務理事)と、席を隣り合わせ意気投合した。翌年二月、南米の「ブラジルを美しくする会」にお供して、多くの教えを得た。中でも「時を守る、礼を正す、場を清める」の生き方は衝撃的で、新たな目標を見つけた。「古希」と「還暦」コンビの楽しい旅…。

 「はがきまつり」の翌日は「広島掃除に学ぶ会・全国大会」で、鍵山さんに再会。その上、松下政経塾の元塾頭を務めておられた上甲晃さん(現在は志ネットワーク・代表)と、宿舎のエレベーターに、偶然にも乗り合わせた。

 上甲さんは、同学ぶ会・講演会の講師として招かれ、掃除も実践された。上甲さんは当時、「将来の日本を担う志高い青年を育てたい」と、「青年塾」の創設に東奔西走されいた。この偶然の出会いがご縁となり、長男が栄えある第一期生として入塾を許された。

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鍵山さん(正面中央)にトイレ磨きの
手ほどきを受ける筆者(右端)

 当時の衆議院議員・中田宏さん(現在は横浜市長)とのご縁も、ささやかな接点からだった。中田さんの講演テープを偶然に入手して、政治に情熱を燃やす強固な信条、新鮮な視点と姿勢に感銘を受けた。しかも、選挙区の神奈川八区に関係ないけれど、中田さんの政治活動を支援し、交流を深めてきた。詳しくは別稿で述べたい。

 平成八年のご縁はまだ続く。十月に入って群馬県で小学校教師をされていた内堀一夫さんと「奈良掃除に学ぶ会」で同室となる。内堀さんは教員生活の二十四年間を貫き、一日も休むことなく「学級通信・青い声」を児童らに届け、多大の教育成果を挙げられた。その実践を真似て、私も社員向けに「デイリーメッセージ」を連日欠かさず発信し始めた。

数多くのご縁が転機の鍵

人生を変えるほどの機縁をいただいた方々は余りにも数多く、ここに書ききれない。次号以降で新たに紹介しい。平成八年の出会いから間もなく十年…。すべての方々に現在まで、なおも教えを受け、啓発され、実践の源泉になり続けている。
 

 ささやかでも、私なりに、出会いによる学び、喜び、生き方を、日々の実践から浮き彫りにしたい。

 ”極意”は大げさかもしれないが、呼んでいただければ幸いである。