<出会い>に学ぶ生き方の極意

No.16 ~心温かき仲間に支えられ、日本一美しい町を目指す~

No.16 ~心温かき仲間に支えられ、日本一美しい町を目指す~back_17_00

市が環境美化功労者を表彰

 師走に入った平成18年12月1日、広島市役所の2階講堂で、第36回「広島市環境美化功労者」の表彰式が、秋葉忠利市長、市議会議長、各区長をはじめ市幹部らの臨席の中で行われ、有意義だった。

 表彰は6部門で、各地域で清掃活動を継続する個人と団体が対象。

 活動5年未満の精励者、同5年以上、同10年以上の永年にわたる実績が認められた個人は45名、団体は35グループ。いずれも、すばらしい活動ぶりで、敬服する。

 個人の大半は善意の高齢者、団体は地域の自治会や老人会などがほとんど。残念ながらも、企業はわが社を含めて5社で、極めて少ない。

 団体の中に専門学校と中学校が各1校、小学校が2校含まれていたのは、実に嬉しい限りである。

 選考の経過はつまびらかではないが、とかく見過ごされがちな地道な活動にスポットライトが当てられるのは、歓迎すべき配慮であろう。

 祝辞の中で秋葉市長は「環境の美化は行政だけでは十分でなく、市民の善意に負うところが大きい。名実ともに国際平和文化都市にふさわしく美しい街づくりに、皆さんの格段の協力をお願いしたい」と、心を込めて強調された。

 しかし、せっかくの意義ある表彰式なのに、マスコミ側の当日取材は1社もなく、心温まる善意の人たちの地道な活動が、全く報道されなかったのは腑に落ちない。隠れた市民らの菩行だけに、もっと脚光を浴びても良いと思う。マスコミ各社は、どう考えているのだろうか?

「例外をつくらない」心意気

 わが社の地域清掃活動は、18年前から始まった。最初の頃は一人で取り組んでいたが、いつの間にか全社的な活動に広がっていった。

 誰にでもできる平凡な行いを、休まず続け、地域に役立てる- それは人としても企業としても、ごく当然な取り組み。当初から「例外をつくらない」と決め、晴雨にかかわらず欠かさなかった。一方、平成11年1月9日にスタートした「JR駅トイレ磨き」も例外ではない。毎週土曜日午前4時半から6時まで…と決めた。早朝から取り組んだのは、一番電車の発車までに掃除を終えて、乗降客に迷惑を掛けないための気遣いである。

 しかし、「例外をつくらない」心意気は、そう簡単でないと痛感した。

 平成17年の第1土曜日は元旦。しかも厳寒で20cmも積雪があり難儀した。それでも仲間は集まり、素手で便器を磨き上げた。ゴールデンウイークやお盆の夏休みにも、土曜日は巡ってくる。時には休日の家族レジャーを犠牲にする場合もある。

 心温かき仲間の応援もあって、平成18年11月11日には連続400週のJR駅清掃を達成できた。記念にささやかな「寄せ書き」を仲間と作成し、お互いに喜び合った。

 現在の掃除範囲は、JR芸備線の安芸矢口、玖村、下深川、中深川、上深川、狩留家の6駅に及ぶ。トイレの悪臭や線路の煙草の吸い殻などを追放し、ホームも待合室までもゴミのない駅にリフレッシュした。

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毎日の清掃は「気を付け」の朝礼からスタート

通学路清掃で活力も励ましも

 「美しいものを見れば、心まで美しくなる」と、鍵山秀三郎さん(イエローハット創業者)は力説される。

 子供たちが登校する小学校通学路を清掃する動機ともなった言葉だ。

 わが社では、毎週水曜日の午前7時20分、小学校正門前に全員が集合、整列。「気を付け」「おはようございます」の掃除朝礼から開始する。

 ダラダラ始めたのでは子供たちに恥ずかしい。「礼を正す」はすべての基本。掃除はニコニコ、キビキビ、イソイソ進めなければ、価値が半減する。登校する子供たちには大きな声で、正しく「おはようございます」とあいさつ。子供たちからも元気のある、かわいい「おはようごぎいます」。この返礼は、日々の仕事にも新しいエネルギーと活力を与えてくれる。本当に嬉しく、ありがたい。

 10年続けて一般参加者が3名も加わり、勇気百倍。地域内にある口田、口田東、落合、落合東、倉掛、亀崎、真亀の7小学校にまで範囲が広がった。学校周辺の雑草を取り除き、ペットらの糞尿から発する嫌な匂いもいつしか全く消えてしまった。

 子供たちは軽やかな足取りと、元気なあいさつで校門を通る。きっと一時限目の授業も楽しくなるはずだ。

 その証拠だろう。3年目頃から、教室の窓から手を振って私たちを励ます姿が見られるようになった。

 子供たちのいじめや自殺などの悲しいニュースが目立つが、一人でも多くの大人たちが「おはようございます」と声掛けすれば、きっと暗い話題も減少するだろう。

 どんなささやかな活動でも、一人の力だけでは続きにくい。私たち「地域を美しくする会」の実践は、心あるる高齢者の皆さんの熱意、若い社員の奉仕の精神などによって支えられ、今も続けている。「継続は力なり」という言葉も、いささか違う。「継続は新たな力を生む」が、実感とし て正しいように思える。

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連続400週達成の掃除を支えるメンバー

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熱い思いを込めて、記念の一筆

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記念の「寄せ書き」を下深川駅長さんに進呈

ささやかな善行の継続で花開く

 いつの頃からかバス停から、ゴミ箱や灰皿が姿を消した。つまり不要になったのだ。「ゴミを捨てる人」「ゴミを捨てない人」「ゴミを拾う人」と大別できるが、拾わないまでも捨てる人が少なくなった証しだろう。

 18年前は至る所に散乱していた空缶やペットボトルなども今や、滅多に見なくなった。煙草の吸い殻も各バス停にはほとんど捨ててない。心ないドライバーが車から道路に捨てる吸い殻などは後を絶たないが、それもさしたる量ではなく、清掃を始めた頃に比べ、隔世の感さえする。

 特筆すべきは、地域内の100カ所を超えるバス停の大半が、見違えるように美しくなった事実である。

 誰が掃除しているのかは分からない。自分の町を自分の手で美しくしたいと願う心ある人が、至る所で着実に増えているようだ。

 ゴミのない町の光景は、人の心を和やかにする。昨今の殺伐とした世相の荒れ模様は、ささやかな行いである掃除を続けることで、いくらかでも解消されるように思う。

 地域の玄関であるバス停、町の玄関であるJR駅、子供たちの未来につながる道の通学路…。心ある人たちとの出会い・善意に支えられ、いつの日か日本一の美しい町になるよう願いながら、ほうきや雑巾を持ち続けたいと心から誓い合っている。