<出会い>に学ぶ生き方の極意

No.21 ~傘寿を超えても向上心燃やす畏友に啓発される~

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喫煙が成人病を誘発する

日本で発売されている煙草のパッケージには以前から、喫煙が健康に悪影響を及ぼす- と警告している。

「喫煙は、あなたにとって肺ガンの原因の一つとなります。疫学的な推計によれば、喫煙者は肺ガンにより死亡する危険性が非喫煙者に比べて約2倍から4倍高くなり…」と。

現在、日本人の死亡の原因は、第一位がガンで、第二位が心疾患、第三位が脳血管疾患と続く。いずれも喫煙の習慣と大きく関わっている。

厚生労働省は「がん対策推進基本計画」をまとめたのだが、「喫煙率半減」という数値目標は見送られた。

年間2兆2千億円に達する煙草消費税の減少を恐れ、財務省が難色を示したらしい。日本たばこ産業(JT)も「個人の嗜好への国家権力の介入だ」と、強く反発したようだ。

だが、健康を損なうと明示している商品を販売する姿勢はいかがなものか。現実として喫煙者は、成人の40%にまで減ったというが、愛煙家にとって禁煙は苦痛で、難儀だ。

私も意志が弱く、悪いと知りつつも、禁煙しては短期間で再び喫煙する愚を繰り返している。情けない。

飲酒ゼロの私が胃ガンに侵され、ヘビースモーカーでも肺ガンに無縁な人もいる。食生活に細心の注意を払っても、大腸ガンで苦しむ実例はしばしば…。皮肉な結果も数多い。

医学的に喫煙とガンの因果関係は明らか。だが必ずしもそうならないから、禁煙できない言い訳も生じ、病に見舞われる率が高い。いっそのこと煙草のない国になれば喫煙できず、三大成人病は激減するだろう。

ガンとトイレ磨きで友情深まる

あれこれ喫煙できない屁理屈を並べる中でも、健康保持のため禁煙に挑戦し、成功した決意の固い人は幾多も…。禁煙腰砕けの意志薄弱者から見れば、まばゆい人たちである。

掃除畏友の永田真一さん(神戸市在住)は、そのお一人。ところが、禁煙しても病魔に侵された。平成15年7月25日、大腸ガンと診断されて即手術…。3カ月に及ぶ長期入院で、4年を経た今も2カ月に1回の精密検査を受けておられる。

同年1月に私が胃ガンで全摘出手術し入院した時も、わざわざ神戸から見舞ってくださった。「ガンの特効薬は笑いだよ」と、呵呵大笑して激励いただいたが、その半年後、逆にご本人が見舞われる立場になるとは…。神ならぬ身の知る由もない。

永田さんは、大正12年1月生まれの84歳。今なお現役で、永田薬品産業㈱会長の立場で指揮を執ってておられる。昭和21年に創設され、業容は化学工業薬品およびケミカルの輸入商社として盛況である。昨年、創業60周年を祝われた。

平成7年4月、兵庫県中小企業家同友会の定期総会で記念講演をさせていただいたが、永田さんは同会の代表理事の要職にあった。講演会後に催された交流会で、親しく対話し名刺交換したのが最初の出会い。
その翌年に鍵山秀三郎さん(イエローハット創業者)とご縁がつながった私は、掃除道にのめり込む。14歳も離れた年齢差ながら、永田さんもトイレ磨き活動に引き込んだ。

平成9年5月に大阪市内で開かれた「大阪掃除に学ぶ会・全国大会」に初参加され、以後も滋賀、岐阜、奈良など各県の活動に顔を見せて、さらに親交を深める間柄になった。

特にガンを患ってからは、死線を乗り越えた人間同士として、トイレ磨きのみならず、はがき道や経営の道にまで交流は広がり濃くなった。

「デイリーメッセージ」も効用

平成9年10月に内堀一夫さん(群馬県在住・元小学校教師)と出会ったのが契機で、全社員あてに約600字のメッセージを毎日届けている。

胃ガン手術の前後も休まず書き続け、今年6月末で3863号を数える。文字数は累計23万字を超えて、はがき道と共に、生きてきた足跡の証で、自分史にもなっている。

推敲や校正前の膚理の粗い駄文だが、永田さんから所望されて一週聞分をまとめ、日曜日の早朝、FAXで送り続けている。その都度、読後感をはがきで、時に長文のリポートにまとめて、ご意見を項いている。

輸入商社だけに、金融は企業の血液として重要な業務だ。大手銀行をはじめ9行の金融機関と今、密接に連携されている。永田さんにとって週一回の支店長訪問も欠かせない。

金融機関やお得意先回りには、何らかの手土産が訪問時に必要だ。世の中の巡り合わせは面白い。実は拙い「デイリーメッセージ」が役立っているようだ。金融機関などでは支店長が目を通してチェックし、朝礼の話材などに活用しているらしい。

執筆者としては面はゆいが、時には催促も来るとかで、光栄の至りである。零細企業主の小さなつぶやきが、金融機関や大手商社などの手土産になるとは…。愉快ながらも、もはや手が抜けなくなってしまった。

永田さんより14歳も若い私としては、古希を超えたからといって、まだまだ安閑としてはいられない。

back_22_01日浦中の生徒と「トイレ磨き、頑張るゾー」と
意気軒高な永田さん(左から3人目))

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「掃除は楽しいよ」と笑顔いっぱい(日浦中で)

 

80歳を超えてなお衰えぬ向上心

14年後、永田さんと同じように熱い向上心を持ち続け、学び続ける自信は全くない。それだけに大いなる指標として、励みの源泉である。

平成17年7月の第一週末、永田さんは、わが社の研修プログラムに自発的に参加された。公開してないが、要望があれば受け入れている。

会社の活動に合わせた二泊三日の研修内容だが、傍目でも実に厳しい。

金曜日は広島市立日浦中学校の「トイレ磨き授業」に参加。土曜日は早朝五時から「JR駅トイレ磨き」に1時間、続いてバス停などの地域清掃に1時間汗を流す。その後は終日、現場巡回。最後の日曜日は親子農業体験塾〈志路・竹の子学園)で塾生と一緒に、自然体験・農業体験に参加。やっと午後3時に解放されるハードなスケジユール。

私たちは毎週の活動で慣れているから平気だが、実は濃密な研修に20歳代の若者でさえ顎を出すほど。

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わが社研修の合間にフレッシュな若手社員と
談笑する永田さん(右端)
〈竹の子学園〉で塾生にあいさつ。
「かわいい皆さんに会えて、嬉しい」

 

体力が持つかどうか心配したが、永田さんは見事に全カリキュラムを手抜きなくこなされた。驚き入った行動力・精神力を日のあたりにし、あらためて畏敬の念を深めた次第。

一般論だが、高齢者が自分の楽しみのために余生を過ごすのは当然。とはいえ、健康長寿のためにも積極的な社会参加は欠かせないだろう。

好奇心旺盛で学び好き。お洒落にも気を使い、新しい友の輪を広げる。社会活動に前向きに参加し、世のため人のため役立つ。それもまた意義・価値ある人生だ。「余生を過ごす」ではなく、「新しい人生に挑戦」という意気込みで日々を送りたい。

それを日常生活で着実に実践し続けている永田さんは、仰ぎ見る存在であり、私の今後にも大切なお人である。負けてはおれない思いだ