<出会い>に学ぶ生き方の極意

No.8 ~一瞬の奇縁を大切にして、孫世代へ伝承~

No.8 ~一瞬の奇縁を大切にして、孫世代へ伝承~

偉大なり!日々貫くメッセージ

論語に「賢を賢として色に易う」という一節がある。「賢者を尊敬して、恋するような熱心さで教えを受けよ」という大意。孔子の若い門弟・子夏の至言で、学びの心構えだ。

 それほど強く思いがあったわけでもないが1月27日、上甲晃さん(松下政経塾元塾頭・現在は志ネットワーク代表)の〈デイリーメッセージ5000号達成『感謝の講演会』ファイナルステージ〉に馳せ参じた。

 会場は東京都墨田区内にある「玉の肌石鹸株式会社」の本社で開催。「デイリーメッセージ」は上甲さんが松下政経塾に在職時、塾生らに思いの丈を伝えたい―と願って、始められた。平成元年から現在まで、 退職後も一日として休まず欠かさず、パソコンで送り続けておられる。

 平成17年5月、節目の5000号に達した感謝・報恩の気持を『全国縦断の講演会』という形で企画・実施され、今回の東京会場で延べ40回のフィナーレを迎えた。累計すると聴衆は総勢5000人余に及ぶ。

 だが驚くべきは、感謝・報恩とはいえ、各地で開かれた講演会の講師料、旅費、宿泊など諸経費をすべて上甲さんご自身で負担された事実…。

 とかく利害得失が優先する日本の世相の中で、自らの損得を超えて志高く生きる「知行合一」の精神を実証・体現され、深い感銘を覚えた。

 何はともあれ、ファイナルステージの場に己の身を置き、畏友たちと感動を共有したいと―熱い思いに突き動かされ、上京の仕儀となった。

 松下政経塾は、国会議員30名、知事・市長六名、地方議員28名など、多くの政治家を輩出し、日本の政治に大きな影響を与えている。

一瞬の奇縁に恵まれ、今に至る

彼らの大半は、上甲さんらの薫陶を受けた教え子に当たる。私ごとき一市民には実に遠い大きな存在だ。

 しかし、ご縁とは不思議なものだとつくづく思う。平成8年6月に開かれた「広島掃除に学ぶ会」に、鍵山秀三郎さん(日本を美しくする会・創立者)のお導きで参加した。

 その会で松下政経塾を退職し『志ネットワーク』を立ち上げた上甲さんが、記念講演されたのが奇縁だ。

 わが国の人心の荒廃や教育の乱れを憂えて「志高く生きる」をテーマ に熱く強く訴え、多くの掃除仲間に感動と共鳴をもたらした。私も心震えた一人である。講演の中で「青年塾」と銘打つ、全国展開による人材育成を提唱され、大いに共感した。

 講演直後、天の配慮によるものだろうか、偶然にも上甲さんと同じエレベーターに乗り合わせた。格調高い講演に熱くなっていた私は、その場で長男の青年塾入りを懇請した。

 幸い、望みは即かなえられ、今も本人の成長に役立っている。言わば、「一瞬早からず、しかも遅すぎない」絶妙のチャンスだったと思う。

 あれから10年。上甲さんの教え生き方に啓発され、長男だけでなく、私の還暦以降の人生を楽しく、豊かに、しかも明るく充実していただいている。有り難い限りだ。

「継続は力なり」の神髄学ぶ

ファイナル講演は楽しい語り口で終始し、約100人が傾聴したが、私自身の体験と重ね合わせても納得できる実例が多かった。

 今を時めく前原誠司民主党代表や中田宏横浜市長も塾生時代は、上甲さんから届けられる「デイリーメッセージ」に戦々恐々だったらしい。

 初期のメッセージは、相手を責めたり批判する内容が多く、塾生から全くそっぽを向かれたそうである。

 文中での「切り捨て御免」は罪深く、相手側に言い分があっても反論できない。それでも書き続けるうちに、いつの間にか、読んで勇気を共に出来る内容に変化したとか。赤裸々な自戒の言葉に、胸打たれた。

 上甲さんの5000号には遠く及ばないが、私も平成8年10月以来、同様の手法で社員にメッセージを発信し続けている。胃がん手術の際も休まず、この度やっと3300号を 超えた。お話を拝聴しながら、独り善がりのスタンドプレーになっていないか―大いに反省させられた。「継続は力なり」と先人は伝えるが、その「力」の中身は継続した本人でないと理解できない。自ら実践せずして人にやらせても、分かるはずがない―深くうなずくばかりだ。

 人の批判をするな! 評論家にな るな! 世の救いになる人になれ!と檄?まで飛ばされる。「5000号は道半ば。10000号に到達したら、祝ってもらいたい。その日にはもう一度同じメンバーで会いましょう」と、意気軒高なまま締め括られた。

得難いご縁を孫世代に引き継ぐ

『志ネットワーク』は、最貧国並みのバングラデシュを巡る《学びと交流の旅》というユニークな活動を展開して、注目の的。

 平成9年に開始した旅は、今年で10年の節目を迎える。物が豊かになって倹ましい暮らしを忘れた日本人が、生活は貧しくとも心豊かな人たちから学ぶ―が狙いだ。

 現地の経済界や子供たちと交流を通じて、相互に理解し合うプログラムも組まれ、有意義。私は第四回、第六回、第八回と参加でき、収穫も多大だった。電気もガスも水道もない農村の暮らしを実体験し、不自由な生活の中での豊かさも味わえた。

 私にとって今年は最後になるやもしれないが、四度目の参加を望んでいる。特に今回は小学四年の孫を連れて行く。同国の暮らしを体感、同世代の子供たちと交流させたいと願っている。飽食の時代に育った孫には、貴重な経験になると確信する。

 一瞬の出会いから生まれた上甲さんとの得難いご縁を、孫世代に引き継ぐのも、私の役割と心得ている。

 一週間の旅ながら、赤道直下の猛暑、政情不安な同国での予期せぬ出来事など、ひ弱な孫には重荷すぎるかもしれない。だが、旅の実体験は将来必ず生き役立つと信じている。

 古希の手習いだが、片言の英会話ぐらいは使いたいので今、孫と一緒に学び、励んでいる日々である。