暮らし新発見

住まいづくりは生涯のお付き合い④

外観

住まいづくりは生涯のお付き合い④

創立四十年記念パーティ

平成二十三年十一月二十日、マルコシは紆余曲折はありましたが、めでたく創立四十周年を迎えさせていただきました。この間にお世話になったお客さまをお招きし、リーガロイヤルホテルで感謝のパーティを催しました。二百名を超えるお客さまが祝ってくださいました。

令夫人はご出席いただきましたが、その中に大恩ある徳さんの姿がなく、心のなかにぽっかり穴が空いた思いがしたものです。徳さんにはビジネスだけでなく企業経営者としてのあるべき姿をたくさん教えてもらいました。

ご縁があったのは高陽地区に本社を移転する四年前の昭和五十八年。感謝のお礼状を筆書きでお届けしたのです。書道の造詣が深かった徳さんは高く評価してくれ、人間としての距離が一気に縮まりました。

大改装工事の相談

徳さんの住まいは旧家で入母屋造りの母屋、白壁の土蔵、大きな納屋、まわり縁で結ばれた別棟の茶室など、歴史を感じさせました。ただし暮らしには不便で浴室も離れた納屋にある昔ながらの間取り。ことば数の少ない徳さんは「妻に長い間不自由な暮らしをさせたから、何もかも彼女の望むようにしてやりたい」とポツリと一言。

当時としては破格の大型リフォーム工事のご注文。嬉しいというよりも責任の重さに身が竦むような思いでした。「ともかく任せるから、妻が喜ぶようにして欲しい」。細かい注文はなかった。そこまで信頼されればやるしかない。少ない智恵と経験をふりしぼりました。何度も打合せをしましたが、ニコニコ首肯くだけ。奥さんは傍にいても口を挟まず信頼仕切っている様子。

ダイニング

問題点を新工法でクリアー

LDKを予定している場所に末口直径五十センチほどの桁と、五寸柱が二本邪魔になるのです。旧家によくある自慢の構造体です。その上には大きな二階が乗っています。それが撤去できれば理想の間取りになるのです。恐る恐るお伺いを立てると、あっさりと許可がおりました。

そこからはプロの本領発揮、鉄骨を活用して強度のある構造体に作り替えました。唯一の特注は奥さんのために流し元にテレビを取り付けて欲しい。それだけでした。

洗面所とトイレの床と壁には大理石をあしらい、浴室は特注の手書きタイルで仕上げました。LDKの床には歩行感のやわらかいコルク材、腰壁にはチークの無垢材を使用、調理場の設えは当時としては珍しい大理石カウンターのシステムキッチン。扉はナラの無垢材で全体として上品で落ち着きのある仕上がりになりました。

工事が終わって感想を求めると「予定していた金額の倍掛かったよ」とニコニコ。設計する立場としてはすべて言い分を通していただき、これ以上の喜びないは思い出の工事になりました。

工事の途中で一つだけ考え方が異なりました。当時は浄化槽の性能がアップし、汚水は地域の排水溝に流せるようになり、水洗便所の設置が可能でした。それなのに徳さんは頑として拒否しました。「わが家の汚物で地域に迷惑を掛けることは誇りが許さない。先祖にも申し訳ない」。誰もが権利を目いっぱい行使する世の中なのにあえて不便を選択する、その生き方に感動し益々尊敬の念を深めました。

瓦礫の山は地域の恥だよ

現在の本社ビルがあるところに、当時は倉庫を建てリフォームの廃材を山積みしていました。徳さんは「町の表通りにがらくたを積むのは不見識だ。恥ずかしい。地域のために美しく使うべきだ」と叱り付けられました。そのひと言が天の啓示のように響き、否応なく本社ビルの建設に踏み切りました。

零細企業には負担でしたが、徳さんの叱咤激励でやり切りました。後から考えると背中を押してくれなければ実現していなかったでしょうね。

困ったのは廃材やゴミ瓦礫の置場。空き地を探しましたが、貸してくれる人はありません。つい徳さんに愚痴をこぼしました。「うちのガレージを自由に使えよ」。あっさり悩みを解消してくれました。

お風呂

ガンに冒される

平成十四年、徳さんは膵臓を患い入院しました。大腸ガン、肝臓ガンを併発し、残念ながら末期症状で手術は出来ませんでした。期限付きの悲痛な闘病生活が始まりました。

同じ年の十二月、私も進行性胃がんを宣告されました。胃と脾臓、それにリンパを切除し、幸いにも一命を取り留めました。

徳さんは頑張り屋さんでした。激痛に耐えながら笑顔を絶やさず、私の心配をしてくれました。

平成十六年七月、徳さんは何度目かの、私は三度目の入院を同じ日にすることになりました。腹水が溜まって象さんのように大きくなった足をさすりながら、「もう帰れないと思う。葬式の準備をしておきたい。ついては親戚のものが泊まれるよう二階を改装してほしい」。私は病い癒えて退院しましたが、徳さんはもの言わぬ姿で帰宅しました。工事は間に合いませんでした。痛恨の極みです。

二十八年も続いている

徳さんが逝って八年になりますが、ご縁は今も続いています。住まいに不具合があるときは、必ず奥さんから相談があります。まるで徳さんからの電話のようです。いつでも走って行きます。愛妻家の徳さんは遠い世界で喜んでくれているでしょう。

住まいのリフォームは一生のお付き合い。いやいや子や孫の時代まで。

リビング

< 工事歴 >

1984 年
総合リフォーム
1985 年
外溝工事
1989 年
ガスコンベクション
1996 年
内装リフォーム
1998 年
キッチンリフォーム
2001 年
建具工事・エアコン工事
2003 年
障子・襖張り替え
2004 年
内装リフォーム
2006 年
畳工事
2008 年
鍵修繕工事
2010 年
建具修繕工事
2012 年
雨漏り修繕工事