俳句歳時記

俳句歳時記 九月俳句歳時記 平成30年9月22日

九月俳句歳時記~仲秋~

草炎俳句会  石川 芳己先生

広島マルコシ句会の9月例会の作品を紹介しよう。10名全員が投句されて、意欲満々である。10時開始だが、今日も早くに会場に着いて選句に余念がない。 

咳払い一つ無い、静かな、学びの空間である。竜胆の花が生けてある。

 

ことことと風の目覚まし今朝の秋    芳己

 

特選

天  糠床に少し塩足す盆の入り    恒子

盆の休暇で子や孫たちが帰省するであろう。このところ糠床もやや塩が不足しているようだ。このさい熱中症対策にもなるし、塩を手加減で振っておこう。ほのぼのとした家族への思いが伝わってくる。

 

地  蝉の翅帆立てて運ぶ小さき蟻   昌子

ミクロの自然界の小動物の世界を巧く切りとっている。人間から見れば、小さな蟻の世界をしっかり観察して描いている。

俳句は観察から出発する。俳句の基本に忠実な作風である。

 

人  遺体焼く臭いの記憶原爆忌    昌子

原爆投下後の広島の惨状を幼いながらも体感として記憶をしている。こうした貴重な体験が空洞化されていくことが危惧されている。

 

入選

鉄橋の寸断されしままに秋    栄子

七月豪雨の被害は余りにも大きかった。鉄道も分断されたままの地域もある。中七と下五の句跨りは秋で完結。

 

雑草の立ち枯れしまま盂蘭盆会  勝子

今年の夏は酷暑で雑草さえも枯れてしまうほどであった。そして、そのまま盆を迎えたという感慨を衒うことなく詠っている。

 

花火終え子らと見上げる星の数  博子

賑やかな帰省した子や孫たちとのひと時が終わる。空には満天の星が煌いている。不思議な宇宙の神秘性を感受しながら星を眺める。

 

秋簾外しかねてる何時までも   弘子

夏の猛暑を遮る為に秋暖簾を懸けている。もう外したいのだが、残暑があまりに厳しく躊躇している。季節の移ろいに狼狽している。

 

里山の道なき先に薔薇燃えて   美紀恵

山を愛する一句。里山を訪れたが、行き止まりの道の向こうには薔薇が燃えるように咲いている。薔薇は手の届かない幸せの花である。

 

絡みつく迷路のごとき葛の花   日出美

上五・中七は座五を説明する一句一章の句である。取り合わせの妙を生かしながら、葛の花に付かず離れずの二句一章を目指したい。

 

蔭さがし小道をぬける白日傘   輝子

中七がこの句の風景を上手く描いている。和服の細身の女性が粋な日傘を指しながら日陰を探していく所作が眼に浮かぶ。

 

晩年はホームもよしと秋の蝶   明男

誰にも頼らない老後を理想とはするが、ややもすると身内に依存しがちである。秋の蝶のように悠然とホーム行きを決意する。

 

俳句は座の文学である。句会はその最たるものである。句会に参加して、選句したり、合評したりすることで、俳句の感覚が磨かれていく。マルコシ句会の会員の皆さんの熱意にはつくづく敬服する。継続は力なり。俳句は継続の文学なり。

秋は物思いの季節である。自然を確り描写しながら、人生の哀歓を五七五に託したいものである。