俳句歳時記

俳句歳時記 十二月俳句歳時記 平成30年12月22日

十二月俳句歳時記~仲冬~

草炎俳句会  石川 芳己先生

広島マルコシ句会の12月例会の作品を紹介しよう。今日は冬至。10名全員出席。10時開始だが、今日も30分も早くに会場に着いて選句に余念がない。会場にはクリスマスの装いがそれとなく施され、幹事の細やかな配慮に感心する。チョコレートのお菓子も用意されていて、和やかな雰囲気である。

 

今日は俳誌「草炎」の藤兼雅幸・編集長の取材を受ける。やや緊張した面持ちのなかで、普段着の句会が披露できたといえよう。流石である。これも作句や選評の力がついてきた証左であろう。嬉しい限りである。

 

句会後は四方山話零余子飯        芳己

 

特選

天  糸瓜忌や顔はモノクロ左側     栄子

糸瓜忌は、謂うまでもなく、正岡子規の忌日である。脊椎カリエスの重病に耐えながら作句した近代俳句の創始者の横顔は坊主頭で有名である。その特徴をモノクロのセピア色と特徴ある横顔で抽象化している。左側とはよく見たものである。

 

地  ストーブのほど良き間揺れる椅子  恒子

ストーブと椅子という、ありふれた素材を中七で上手く構成した点がこの句の手柄であろう。熱くもなく、かといって寒くもない程よい距離を保ちながら椅子に揺られている幸せを見事に描ききっている。こうした肩の力のぬけた秀句が読めるとしめたものである。

 

人  石蕗は九十歳の恋の色       美紀恵

石蕗の黄色を恋の色と断定しきった作者の強い思いに圧倒される。しかも卒寿の恋である。恰も宇野千代ばりの老いらくの恋である。死ぬまで恋していく生き様は凄まじく男女を縺れさせる。まだまだ老けるのは早い。畠山みどりの「恋は神代の昔から」を想起した。

 

入選

小春日や同窓会の所作元気        博子

所作という動作に着目した点がこの句の命である。何年かぶりに集まった懐かしい同級生の昔から変わらぬ所作を懐かしく思う。小春日の季語の斡旋も巧みである。

 

玉葱や行き先決めて苗植える       明男

玉葱のお裾分けをするのだが、予め玉葱を差し上げる行き先を決めて苗を植える。なんと几帳面な性格であろうか。玉葱も行き先を思って、きっと緊張して生育するであろう。脱帽する。

 

雪虫を眼で追いかけて曇り空       輝子

雪虫の季語の斡旋が、この句の手柄である。中七は少し説明的なってしまった。座五も推敲すると楽しい。しかしながら、微視的から巨視的な視座への目線の動線の把握は見事である。

 

三行に納まる日々や日記買う       雅幸

変化のない単調な日々は日記に記すほどのこともない。手持ち無沙汰の無聊観を感じさせる一句である。三行で納まる日々の生活とは何か。興味津々である。新たな年への希望を膨らませている。

 

一枚の落ち葉に群れる錦鯉        昌子

落ち葉を小道具にして池の鯉の動きが見事に描写されている。一枚を、ひとひら(一片)とすると、さらに情感が漂う。良寛の辞世句「裏を見せ表を見せて散る紅葉」を連想してみる。

 

お披露目の雅楽聴き入る報恩講      日出美

報恩講は、真宗開祖の親鸞上人の忌日法要である。若い雲水が初めて披露する雅楽を神妙に聴いている。如何にも熱心な門徒らしい風情が垣間見え、静寂の中に笙、篳篥、龍笛、等の音が聞こえてくる。

 

じわじわと卍固めの寒さ来る       勝子

この句のユニークさは卍固めである。プロレスの卍固めを想像する程に厳しい寒さを上手く喩えている。発想が豊かである。思わず微笑んでしまう。上五のオノマトペも効果的である。

 

小春日和今も賑わう伊勢参り       弘子

上五は六音だが許容される。伊勢参りは江戸期から盛んであった。伊勢名物の赤福は新幹線・新大阪駅の売店でも買える。今も昔も賑わう伊勢神宮の気高さが、そこはかとなく伝わる旅の一句である。

 

今年の最終句会に相応しい作品が出揃う。この1年間の上達の現れであろう。マルコシ句会の会員の皆さんの熱意には深甚なる敬意を表するものである。

この1年を振り返れば、マルコシ句会の生みの親とも謂うべき御大の木原伸雄相談役を失うという哀しみから始まった。幸い、木原淳・社長のご厚意で相談役の遺志を大切にして句会を継続することとなり、会員一同、心を新たに俳句づくりに取り組んできている。新しい会員の加入という嬉しいこともあった。時には作句が四苦八苦になった時があったかも知れない。しかし、句友の笑顔に励まされて句会に参加し、生きる勇気を与えられたことであろう。  

私にとっても、毎月の広島マルコシ句会は俳句活動の大きな支えになっている。共学びにより、俳句を楽しませていただいている。

今日は、零余子飯のお弁当で忘年会。クリスマス風の粋な飾り付け等、幹事の岡元さんや会員の皆様方の温かいお気持ちが嬉しい一日だった。感謝。

俳句は継続の文学なり。自然を確り描写しながら、人生の哀歓を五七五に託したいものである。俳句は楽し。人生五七五。今年1年間大変お世話様になりました。来年もよろしくお願い申し上げます。ご健吟を祈ります。