俳句歳時記

俳句歳時記 一月俳句歳時記 平成31年2月23日

二月俳句歳時記~初春~

草炎俳句会  石川 芳己先生

二月にはいると節分、立春と立て続けに季節は巡り、季節は一気に春へ向かう。蝋梅や梅ども、そして蕗の薹が頭を擡げる。受験シーズンでもあり、若者たちも巣立ちの季節を迎える。二月は定例の第四土曜日の句会となる。

会場には、幹事の岡元美紀恵さんの細やかなご配慮で、早春に相応しい生け花が添えてあり、句会らしい雰囲気に充ち満ちています。感謝。

 

早春の光の中にゐて菩薩          芳己

 

特選

天  崩落の山に水仙咲きにけり      栄子

広島の災害への鎮魂歌である。新しい生命の漲りと希望に託した敬虔な思いが伝わってくる。水仙という小さく健気に咲く花が象徴的である。因みに、水仙の花言葉は、自己愛、神秘という。

 

地  前向きに余生はかりて晦日蕎麦    昌子

余生は幾らあるのだろう。思ってみてもせんなきことである。それよりも、いっそ、生かされていることに感謝しつつ、有意義に精一杯に生きてゆこう。そうした前向きの勇気を与えてくれる一句。

 

人  帯締めてポンと叩いて初詣      恒子

新しい気持ちに切り替えて、新年を迎えたい。気っぷ良く帯締めを叩く威勢の良さが眼に浮かぶようである。中七の動きが上手い。音感に訴えた手法も手慣れている。自分を奮い立たせる所作が魅力。

 

入選

里静か山茶花の白さらに寂ぶ        美紀恵

静か、寂ぶ、と畳みかけた点がどう評価されるか。山茶花の白色という実態に何かを心象的に表現しようとする意図は見える。

 

成人式祖母の優しさ身にまとい       明男

成人式の晴れ着には祖母の思いが詰まっているのであろう。家族の愛情をたっぷり頂戴した晴れ着に身を包んでいる風景がよく見える。

 

小寒や孫の匂いのシーツ干す        輝子

孫は目に入れても痛くはない。孫の匂いは愛おしい。小寒の晴れ間にシーツを干して気持ちよく寝て欲しいと願う祖母の優しさである。

 

初雪や靴跡に靴重ね見る          勝子

田捨女の「雪の朝二の字二の字の下駄の跡」を彷彿とさせる。靴よりも下駄の跡のほうが日本的である。時代の流れを感じさせる。

 

初春に大きな欠伸子ライオン        博子

初春や、とすれば、切れの効果が出る。大きな欠伸と小さな獅子の取り合わせの工夫がある。微笑ましい新春の獣園の光景である。

 

平成の文字炙り出す蜜柑汁         日出美

平成を名残惜しむ心情を炙り出しという懐かしい小道具を用いて上手く描いている。炙り出しの蜜柑の香りまでもが伝わってくる。

 

ドタキャンに手持ちぶさたや寒の雨     弘子

折角の約束を反故にされた空しさ無聊感が良く伝わってくる。寒の雨の季語の斡旋が巧みである。そんな時には句でも詠みましょう。

 

毎月、句会が近づいてくると、幹事の岡元さんから俳句作品が宅配で送られてくる。それを開封して皆さんの俳句作品を拝見するのが実に楽しみである。そして、作品を眺める。しかし、すぐには添削しない。少し時間をおいてから、徐に赤いボールペンを走らせる。最近は、文字が丁寧でない。自分でもわかってはいるが巧く書けない。歯がゆい。添削に時間は、纏まってとれる時間を利用する。早朝のこともあるが、睡眠時間は必ず摂るようにしている。添削する場所は、徳山の自宅の自分の部屋か、岩国市の別邸の居間である。俳句と向き合う時間は、私にとっては自分を忘れる時間かもしれない。職業柄、書く作業に関わる時間は多かった。井上ひさし、ではないけれども、どちらかと言えば、私は遅筆の方である。しかし、その気になったら、一気にかくこともある。要するに、書くことが決まらなければ、いくら時間的な余裕があっても書くことはできない。気儘なものである。桜前線も近づいていきました。弥生も句づくりを楽しみましょう。