俳句歳時記

俳句歳時記 五月俳句歳時記 令和元年5月31日

五月俳句歳時記~初夏~

草炎俳句会  藤兼 雅幸先生  

なるようにしかならぬもの蝸牛      雅幸

 

特選

天  正論の友に疲れし心太       恒子
世の中はなかなか正論だけでは上手くいかないことも多々ある。時にはファジーに、心太のように半透明くらいがちょうどいい。まさに取り合わせの妙です。

 

地  来ましたよ今年も桜薬師様     輝子
花の時期、枝垂れ桜で有名な岐阜県の「桜堂薬師」ニュースにも取り上げられる。作者は健康祈願に毎年行くのだろう、敬虔な思いも伝わる。

 

人  鯉幟六尺五寸の風を待つ      勝子
鯉幟がピンと張って泳ぐ姿は意外に少ない、だらりと竿に巻きついてることもしばしば、その丈を尺貫法で表現したのもいい、2メートルじゃイメージが沸かない。

 

入選

佳きことをひとつ見つけて春の虹  日出美
作者はあまりくよくよしない人柄と見受ける、そういう人には些細なことも嬉しく「佳きこと」と感じることが出きるのだ。穏やかな日常をおくる秘訣でもある。虹にも会えてもっといいことが…。

 

禅寺や桜蕊降るゆるき昼      博子
花の終る頃になると気候も落着いてくる、座禅会にでも参加したのかゆとりのある気分が出ている。

 

春の朝今日も生きるぞパンの臍   昭男
闘病中と思われる作者、おやつのパンの臍を見ながら自分の丹田あたりにも力を込め回復に新たな決意をする。

 

黒揚羽一頭過る令和かな      栄子
黒い大きな蝶を見てどう感じるかは人それぞれだが、黒い色には一種の不安と同時に気を引き締める感覚もある、少なくとも安穏とした気分ではない。新時代を仕切り直して生きて行こうとしている。

 

ときめきを忘れて久し時計草    美紀恵
例え人妻であってもときめくくらいは許される、またそれくらいの心の余裕がなければ内面からの美しさは保てない。恋多き人は若々しいと言われる所以だ。忙中の閑を見つけ大切にして欲しいものである。

 

平成の記憶に滲む春の月      昌子
過去を振り返らず、飄々と日々楽しく暮らしていても、新元号となりとつい振り返ってしまう。
自分にとっては思ったよりも平穏な平成だったかもと、ぼんやりとした春の月を見ている。
日本で戦争のなかった元号は平成だけらしい。

 

入選句総評

ご覧のように明るい素直な句が多い、皆さんの人柄に依るものであることは言うまでもない。
目をつけた句材が所謂プラス志向で、そういう句は読んでて楽しいし元気を貰う。句には性格も出る生き様さえ覗かせることもある。また来し方、生きてきて体験した以上のことは詠めないとも言える。でもまだ間に合う、色々なものに食指を伸ばし見聞を広げ、大いに雑学を身につければ作句の巾は容易に広がる。それが若くある秘訣、健康の源ともなる。益々のご健吟を祈ります。