俳句歳時記

俳句歳時記 六月俳句歳時記 令和元年6月29日

六月俳句歳時記~仲夏~

草炎俳句会  藤兼 雅幸先生  

ヴェニスとか行ってみたきや田水張る      雅幸

 

特選

天  捕虫網持つ子の手には団子虫       博子
夏になると色々な昆虫が出まわる。表本作りか、飼って研究か、張り切って出掛けてダンゴムシと遭遇。「なんだこれは!不思議なおもしろい虫を発見!」子供の夢中な姿が手に取るように解る。

 

地  老いの愚痴娘に笑われて五月晴      昌子
五月晴は本来梅雨晴間のこと、そういう意味でも上五の「愚痴」と絶妙に響き合っている。作者も一緒に笑っている平和な親子の風景、お孫さんも一緒かもしれない。

 

人  蔦繁る塀の向こうは謎だらけ       美紀恵
よく通る道の高い塀、どんな色だったかも解らないくらい蔦で被われている。向こう側には何もなかったはず、時折変な音がする。気になって仕方がない。なにげない一景を見逃さなかった手柄。

 

入選

父の日や急ごしらえの酒売り場    輝子 
父の日プレゼントコーナーの看板の下に店員がお酒売り場からせっせと売れ筋を運んでくる。たいていテレビ宣伝の行き届いたものが前列に並べられる。素通りしそうな景に注目した感性が素晴らしい。

 

鱧料理薦め上手の京言葉        恒子
この句の手柄はなんと言っても「京言葉」の斡旋です。シーズンになると京のあちこちでメニューに揚がる。「旬どすいかがどす?」の声が聞こえてきそうだ。

 

枝を剪る鋏のリズム五月晴       勝子
剪定バサミにリズムがあるのか?実はあるのだプロの職人の鋏は動きに無駄も無く高木の上で踊ってる。そのソツの無い動きをリズムと捉えた小さな発見が句になったのだ。

 

ささやかに昼餉の後の昼寝かな    栄子
お昼を食べてすぐ昼寝なんて行儀が悪いと言われてきた作者、子供等を育て上げやっと気儘な余生となり。上五にあるようにささやかな抵抗を見せている、そしてそれが「おちゃめ」な行動ともとれて諧謔を感じる。

 

夏服の白より眩し女学生      日出美
白い夏の制服になって軽やかに、はつらつとした健康美がより際だつ。白より明るい色はないが小麦色の笑顔はそれより眩しい。作者の目はしっかり見ていた。

 

入選句総評

シンプルな句ほど奥が深く景が広い。余計なものを削ぎ落とされた句は読者を遊ばせてくれるものです。今回入選のほとんどが日頃の何気ない見逃しがしがちな景の「発見」によるものです。「ぼ~っと生きてんじゃねーよ」が巷で流行ってますが、まさに俳人の目がなせるものです。俳句はこの「発見」だけでも充分成り立つしそこそこ読者に評価されますが、さらにその上を目指すなら「観察力」です。それには沢山の先人のいい作品を読んで手法も参考にするのが早道かもしれません。