俳句歳時記

俳句歳時記 七月俳句歳時記 令和元年7月27日

七月俳句歳時記~晩夏~

草炎俳句会  藤兼 雅幸先生の講評  

眼の手術して青梅雨の一樹かな              雅幸

 

特選

天  水中花ポンと投げ入れポと咲きぬ     日出美

なんとオノマトペの巧みなことか。「パッと咲く」でも充分だが「ポ」の一音の効果を思い知らされる句である。作者の心根の純粋さ可愛さから出た表現だろう。すばらしい!

 

地  羅をひるがえし素っ飛んで来る      勝子

 金子兜太を思わす意表を突かれた句。瀟洒な婦人のハプニングが手に取るように見えるフモールのある作品。余計なものも無く、季語の持つ景が最大限活かされていて気持ちがいい。

 

人  同じ本借りてパラパラ梅雨深し       輝子

このオノマトペが雨音さえも連想させて効果抜群の句。季語の梅雨と絶妙に響き合ってバランスの取れた句となっている。なによりリズムがいい、ありがちな日常をクローズアップしている。

 

入選

少年に大人の匂ひラムネ噴く       栄子 
少年の大人の片鱗を発見する句は時折みかけるがラムネとの取り合わせが巧い。
作者の見守るような優しさも見え、母性愛をも感じさせる句となった。

 

梅雨篭り卓の上の片付かず        恒子
気怠さの表現としてこの上ない。読者の100人中100人が納得する句である。
さらっと作られてるが「卓」の字の斡旋にはきめ細やかさを見せている。

 

麦秋や百才体操空へ手を             昌子
県挙げて推進している所もある「百年体操」、暖かくなって始める人も多いと思われます。
子の季語の持つ色合いが句のテーマを引立たせている。

 

鴉狙う頃が食べごろなり蕃茄           博子
「蕃茄」トマトのことである。おそらく自家菜園で鴉に悩ませれている作者。「食べごろのトマトを狙う鴉かな」でも同じようだがこれでは鴉が主役。本句とは比べ物にならない。

 

向日葵や身の丈ほどの花を付け     美紀恵
小さな向日葵も可愛いが見下ろされるような向日葵には逆に元気を貰う。作者がその大小それなりの花に自分を見つめる、何事も分相応を良しとする穏やかな感性が優しい句にしている。

 

入選句総評
今回驚かされる句に出会いとても嬉しく選をいたしました。先日ある句会で「俳句は文学だと言われて私には荷が重いのですが…」との質問に、私は「俳句はゲームです言葉遊びです楽しむことが大事です」と応え、納得していただきました。「すでに景をもつ季語に言葉を組合せリズムを調えるゲームです」とも付け加えました。作品の善し悪しは読者が決めるゲームです。自分ではつまらないと思っても読者には新鮮な驚きとなることも、またその反対も、自分では格好いいと思った表現も読者には陳腐に受け取られることもあるのです。
今回の作品も作者はおそらく普通に詠んでるのでしょうが、世に出て名句になることも。だから面白いのです。限られた音数ながら表現は無限です。これからも自由な発想で気楽にのびのびと詠んでいただくことを期待します。