俳句歳時記

俳句歳時記 十月俳句歳時記 令和元年10月26日

十月俳句歳時記~晩秋~

嘘つきの顔二度洗う秋の水          雅幸

 

草炎俳句会  藤兼 雅幸先生の講評 

特選

天  独り言つ時には「うふふ」小鳥来る     栄子             

今時分あちこちの繁みで小鳥たちが騒がしい。そんな生き物の快活に元気を貰いながら一人歩きをしている、時には周りを気にしながら思い出し笑いをしている。作者の秋晴れの身も心も気持ちのいい一日が見える。この季語の斡旋がウキウキ感を増幅している。

 

地  古寺や猫に招かれ杜鵑草          博子
 ひょっとしたら無住寺でそこに住み着いている野良猫かも、通りがかりにその猫と目が合った。意外と可愛い猫だと少し後をつけてみるが、その寺の床下に消えた。あきらめて戻ろうとすると苔むした蹲を抱えるように独特の花をつけている杜鵑草が群生している。特徴的な花がこの寺のあれこれを想像させる。
 
 
人  風甘く止まるところ金木犀         美紀恵

住宅街かもしれない、見渡して香りを追って見るが、ふと風が止んでてまた振り返ったりもする。五六軒先、ついに甘い風の製造元を発見した。「こんなところに」と作者は次の風を待っている。所謂一物仕立て、金木犀をとことん注視して生まれれた句である。

 

入選

秋寒し少し濃いめのハイボール          恒子
名前の由来は諸説あるようだが、最近またハイボールが流行っている。この句の手柄は“ハイボール”他の酒では暗くなる。旨い肴と愉しく呑んでる様がよく見える。

 
マニキュアは中指にだけ初紅葉          輝子
秋、少しづつ乾燥してきて手足の手入は女性にとって重要だ、指先のお洒落にも挑戦してみたい。赤いマニキュア、全部の指に塗るには抵抗がある、その恥じらいが伺えなんとも可愛い。


亀ですか飛石ですか秋の川            日出美
秋の川は通常水も少なめである。ちょっとした岩なら顕になる。小さい川ならそれらを飛び石にして渡ることも可能だ、その二三歩目に亀のような石を発見、あまりにも似ていて、つい口に出たような句が可愛い。

 

腰伸ばすラジオ体操天高し            昌子
早朝、高齢者がグループでお散歩会なるものもあちこちであるようだ。そして6時半からのラジオ体操で締め括りとなるが、こういった参加者は背筋の伸びた人が多いのも頷ける。


大鈴の谺す村の秋祭               勝子
鳴り響く大鈴の音、雑音の無い静かな小さな村だとよく解る。背戸の山に谺したその鈴の音を聞いて、三々五々産土の小さな秋祭りへ豊壌の感謝と家族の安寧を願い集う。若者はつっかけだったりするが、年寄りほど身奇麗にして出掛ける。

 

入選句総評
これらの入選句以外も素晴らしい句がありましが、残念ながら季節外れで選より外すこととしました。句会は兼題の無い場合は基本的に“当季雑詠”で、俳人としてより季節に厳しくありたいものです。さて、これら入選句すべて明るい句となりました、句には少なからず人柄が出るもの、嬉しいことです。ただ時としてその真面目な人柄が句作りの壁になってるのではと思うことがあります。景を正面からでなく斜めにまたは真裏から見ると新しい発見があるかもしれません。句作りに於ては少しだけ不真面目に、嘘つきになりましょう。