俳句歳時記

俳句歳時記 十一月俳句歳時記 令和元年11月23日

十一月俳句歳時記~晩秋~

短日や吾が影先に帰宅せり     雅幸

 

草炎俳句会  藤兼 雅幸先生の講評 

特選

天 カーテンの閉まった家や柿たわわ       博子

こういった見過ごしそうな、ごく普通の何でもないような景に俳諧味を感じ作者は見逃さなかった。それが一番の手柄と言えるでしょう。この家に人はいるのか、でも柿は沢山実をつけている、人の家の柿は殊更おいしそうに見えるものだ

 

地 菊日和和服詰め込む旅鞄            勝子
 
この季語の菊には、重用の節句に言われるように他の日和季語にない無病息災や長寿を願うイメージが含まれています。今の健康に感謝しつつ旅気分になった、しかもいつも以上に日本人になってみたいと重たい和服まで。健康である証拠だ読んでいる方も嬉し
くなる作品だ。

 
人 目を閉じて探しをりぬ金木犀         輝子
 
目をつぶってモノを探すなんてありえないこと、それが金木犀だから納得出来る。五感を研ぎ澄まし鼻の穴を拡げてレーダーのように首を振っている、そんな滑稽な様子も想像出来る楽しい句になっている。

 

入選

コスモスと復旧列車に手を振りぬ         日出美

災害で不通になっていた列車がやっと通じた線路際に群生しているコスモスも嬉しそうだ。そんな作者の素直な気持が表現されている。爽やかな風も吹いている。


珈琲の程よき苦み初時雨             美紀恵

珈琲の苦みは気分・体調によって感じ方が違うもの、雨に思いを馳せ、楽しんでいるようにも取れる。初冬への感慨を焦点を絞って表現した巧みな作品となっている。


老犬と影踏み合って秋夕焼            昌子

秋の夕焼けは本当に綺麗だ、しかし暮れるのも早い、散歩も小走りになるが何せ老犬、いつもの場所まで行って、戻る時は影が反対になって犬が作者の影を踏んでいる。「老犬」がこの景をいっそう優しくしている。


一人分に余る栗剥く夜の静寂           恒子

貰った栗、栗飯にするにも一人分には5、6 個もあればいい、多目に炊いて配るかと、思いをめぐらせている。手の掛かる栗剥きへの集中が夜を尚更静かにしている。


母を呼ぶ犬の名を呼ぶ花野道           栄子

母と私と愛犬と2.5 人で来たことがあるこの花野道。リードはずっと張り詰めている。そんなことを思い出しながら秋の花に慰められている。少し寂しい景ですが深い愛情を感じますね。

 

入選句総評
天の句、平明な句の代表格と言えるでしょう。詩心を持って出かければいっぱい見つかりそうで、「カーテンの閉まった家」なんてどこにでもある、でもこの季語と取り合わされたことで様々な景を想像させてくれる詩になったのです。言わば季語の力が最大限活かされた句なのです。次の句の「菊日和」も、今回そういった季語がしっかり坐った句、所謂「季が動かない句」を選びました。読者も気持ちよく鑑賞できるのです。