俳句歳時記

俳句歳時記 一月俳句歳時記 令和2年1月26日

一月俳句歳時記~仲冬~

寒に入りゼンマイ仕掛けの身となりぬ     雅幸

 

草炎俳句会  藤兼 雅幸先生の講評 

特選

天 福つれてお出で下され嫁が君      恒子

【嫁が君】とはネズミのことである。大黒様のお使いとも、特に正月はお供えをする地方もあり、そう言ったことから新年の季語となっている。まさに今年はネズミ年、先ずタイムリーな季語の選択に拍手、そして作者の素直な信心と優しい眼差しに拍手したい。

 

地 行く年や期限の切れたパスポート    昌子
 

この句は意外に気が付きにくいが季語の斡旋が完璧なのです。中七にしっかり繋がる時間軸表現、気持ちよく歯切れのいい句となった。旅への思いもしっかり伝わってくる。

 
人 年新たスマホの記録三千歩       輝子
 
三千歩と言えばまだまだ少ない、この少ない表現がまだまだ歩かねば、「今年はもっともっと歩くぞ」との意志を髣髴させる。逆に一万歩のように十分な歩数だと詩が生まれない。
 
 

入選

今生は母でありたし雑煮炊く        栄子

正月集ってくれた子供たちもすっかり中年である。来た時は大抵の料理はしてくれ、上げ膳据え膳で優しくしてくれるが、ちょっと母親風を吹かして雑煮をつくる。「やっぱり母さんの味じゃね」と、老けた子供たちの声に作者のほくそ笑みが見える。

 

美しき雲そして怖きや寒夕焼        美紀恵

空気が清んでいる分冬場の夕焼けの方がきれいだとも言える。雲も夏のそれよりくっきりと深紅を見せる、作者はそれにある意味敬虔な畏れを感じた、内面の信心深さも見える。

 

山茶花の二輪添わせり蹲に         博子

蹲にポトリと落ちたのかそれとも拾って浮かべたのか。山茶花などは花の少ない時期に咲くからより情緒的に重宝される。作者も色々な想いが交差し優しい気持ちになっている。

 

いも版のねずみ賀状の餅かじる       日出美

これは面白い、ありえないことだが何となく理解できる。これも俳句である。

 

実南天光の房のキラッキラ         勝子

実を光の粒と捉えた。座五、普通「キラキラと」とするところだが、この個性がいい。

 

入選句総評

新年の今月は全体としてやや不作かも…。年末年始女性の場合特にあれこれ繁多で、なかなか句作りに集中できる時間が取れなかったのではと察します。それでも何とか形にと、苦労の跡が見えます。波があって当然です、ただ忙しい時こそネタは転がっているものなのです。作ろうと探さなくても、動けば動くほど身の回りに句材は生まれるのです。句帳を離さずちょっとしたことでもメモしたいものです。