俳句歳時記 2月俳句歳時記 令和2年2月22日
2月俳句歳時記
まだ生きろと春一番が引っ叩く 雅幸
草炎俳句会 藤兼 雅幸先生の講評
特選
天 大寒や長湯の夫に声かける 輝子
今日は寒い、普段は烏の行水なのにいつもより長い、「大丈夫?生きてんの?」気さくな夫婦のやりとり、何気ない普通の暮らしの中のワンショット。詩心と優しさがこの景を切り取った、平明ないい句はこうして生まれる。
何とも楽しい句です。今年は特に暖冬で大根が豊作とか、通りすがりかもしれない、「欲しいだけ持って行きんしゃい」市に出してもお金にならない、畑の農家さんのやけくそみたいな声も聞こえる。作者は何本貰ったのだろう。
「火の用心マッチ一本火事の元」今はこんなことは言わないだろうが、二人一組で町内の夜廻り、気の合わない人と組になることも、そんなことも想像させてくれる。中七が絶妙だ。
入選
美容師の魔法にかかる春隣 美紀恵
少し短めにとか、いつもと違うヘアスタイルを勧められたのかもしれない。「いいよお任せ!」と委ねる。鏡のさっぱりとした仕上がりを見て「そうか、もう春だよね」と納得した。ショッピングセンターでも回って帰えろうかの気分、そして「また衝動買いをしてしまった」と、作者の休日の一日が浮かびます、これも季語をフル活用した楽しい句。
空き缶を蹴散らす男の子枯野道 栄子
計算された巧さの見える句。『蹴散らす』の誇張とあまり使わない季語の斡旋といい、まさにそつのない句、不貞腐れた反抗期の男の子がくっきり見えますね。
友からの大きな声の初電話 博子
「お・め・で・とー」日頃でもそうなのに殊更にでかい声。一層新年を感じさせてくれ、いつも元気をもらう明るい友達だ。友への感謝の気持ちが背景にある、中七は愛情表現だ。
微睡の覚めて独りや春炬燵 恒子
ついうとうとと無精にしてしまう炬燵。春炬燵はなおさら、そんなに寒くない日は電気を切ったままでも入ってたり。「すっかり怠け者になっちゃった、でも誰にも怒られるわけじゃないしいいよね」と作者はぺろっと舌を出してるかもしれない。と、楽しく解釈したい。
初場所や賜杯に抱く亡き恩師 昌子
幕尻の優勝、感動的でした。こういう時事句はとかく川柳っぽくなりがちで難しいのですが、要点を的確に無駄なく捉えそつなく出来上がってます。