掃除に学ぶ

1-10 ~地球の裏側でも~

地球の裏側でも

燎原の火のごとく

昨年の上海に続き、地球の裏側のブラジルでも掃除の火の手があがりました。

5年前、鍵山秀三郎さんの掃除哲学に感銘を受けた田中義人さん(岐阜・東海神栄電子工業社長)を中心に、岐阜県大正村でわずか30数名でスタートした[日本を美しくする会・〇〇(県名)掃除に学ぶ会]のささやかな活動が、ブラジルでもはじまりました。

日本での今年の全国規模の[掃除に学ぶ会]は29の都市で開催が予定されています。そこにはトイレ掃除を通じて、自らを磨きあげようという自称[そうじびと]たちが、毎回300名も集い、トイレ磨きに汗を流しています。

掃除がまた海を渡る

1月30日、鍵山秀三郎氏ご夫妻を団長として日本の[そうじびと]41名が、ブラジルに向けて13日の予定で旅立ちました。わたしもその一員です。

現地のマスコミは到着前より、わたしたちの渡伯を大きく取り上げ、サンパウロ新聞や、日伯毎日新聞では一面で「ブラジルは日本に比べて掃除というものに対して、極めて関心が低い。日本から掃除に学ぶ会のメンバーがブラジルにきて、ブラジル人に掃除の大切さを教えてくれることに感謝している。」という論調でした。

とくにサンパウロ新聞では「日本の億万長老の経営者たちが…」という最大級の賛辞で、主要な参加メンバーの企業紹介をしていました。

ブラジル側は、現地で15の美容院を経営する飯島秀昭氏(サンパウロ・蒼鳳社長)を中心とする日系のメンバー40名が、[歓迎]の大きな横断幕とともに暖かく迎えてくれました。

掃除で結ばれる日伯

掃除の実践会場であるイビラプエラ公園では、まだ夜も明けやらぬ早朝から掃除に関心を持つブラジルの人たちが続々と集まり、開始時間には500名にもふくれあがりました。

通訳を通じて「掃除のこころ」をことばで伝えることは難しかったものの、実践を通じて掃除をすることの素晴らしさは理解されたように思います。

現地の参加メンバーは、ブラジルの明日を担う20才前後の青年たちが中心で、7ケ所のトイレと6万坪の公園掃除に、陽気な民族らしく嬉々として取り組んでくれました。

昨日までまったく見知らぬ異国の人間が、掃除を通じて国境を越えて理解しあい、一つになれたという感動がありました。

これは掃除というものが、たかが掃除ではなく、一見平凡に見えるもののいかに大きな力を持っているかを証明したように思います。このささやかな運動が、この日をきっかけとして、掃除蔑視のブラジルに根づき、新たな交流や文化が育まれるような気がしました。

信頼される日本人

日本人(日系人)はブラジル国民から、尊敬され厚い信頼を得ているといいます。政治の世界でも、経済の世界でも、多くの人が相当の地位を得て活躍しておられます。

何故?という問いに「日本人は勤勉で礼儀正しく、なによりも己れを捨ててブラジル国民とともに、国づくりに尽くしたことが評価されている。」との答え。

このようにものごとの判断基準を損得よりも善悪においた生き方こそわたしたちがいま学ばねばならないことだと思います。

己れを捨てて他のために早くす。掃除道の神髄を、異国で懸命に生きる日本人に教えていただきました。

(97年4月)