掃除に学ぶ

1-9 ~掃除用具の住まい~

掃除用具の住まい

夜間研修の延長戦

「今夜は技術研修のあと、トンカツ日本一の[浜勝]見学じゃ。」
「なにを見学するんかいの。」
「きまっとろうが。[浜勝]いうたら掃除。そこで評判の掃除用具の置場を見学するんよ。」
「なんじゃ、掃除用具の見学か、やっとれんのぉ-。」
「心配するなや。見学が済んだら日本一おいしいトンカツの味見をしながら、ウチの掃除用具置場づくりの検討会じゃけん。」

慣れのせいか最近の我が社の掃除用具は少々乱暴に扱われています。

[浜勝]の元岡社長とは、掃除を学ぶ会での顔見知りです。ただし顔見知りといっても、元岡さんは掃除の大先輩で時折遠くからお見掛けするといった間柄です。

わたしは前夜ひそかに[浜勝八木店]の掃除用具置場を確認し、吃驚仰天済みでした。まさに掃除道に叶った使い易い整理の仕方でした。

これは説明するよりも、ありのままを社員に見せてびっくりして貰うほうが理解が早いと判断し、研修の延長になったのです。

効果のある現場研修

事前に店長に許可をいただいていたので、遠慮なく裏手にまわり、全員で出番を待っている整理された掃除用具の状態を見せていただきました。

さすがに効果抜群で、部材をスケッチしたり、写真を撮ったり、用具の種類や数のチェックをしたり大わらわでした。

早速トンカツを賞味しながら、我が社の掃除用具置場整備の検討会になりましたが、そうそう永くは続かず、いつのまにか「トンカツ」の批評会に変わってしまいました。

店内の清掃具合から店員さんのマナー、それに肝心のとんかつの味のことなど、口角泡を飛ばしての議論にはいささか疲れましたが、それでも食事の終わるころには、制作責任者、部品調達係などの役割も決まり、あとは[掃除用具置場]の完成を待つばかりとなりました。

掃除用具に命を入れる

掃除を徹底するには、掃除の意味するところを理解したり、それぞれの心構えを正したりすることは当然のことですが、なによりも掃除用具に命を入れることが大切です。

命を入れるとは人間と同じように大切に扱うということです。まず用具に名前をつけ存在証明をする。雨風がしのげる場所をつくる。ピカピカに磨いてやる、ことです。

掃除を続けるには、環境づくりと使い易い用具の整備は不可欠です。

掃除用具の住まい完成

せっかくトンカツを餌に掃除用具の現場を見せたのに、一向に取り掛かる気配がありません。仕事が忙しく忘れてしまったのか。「さては食い逃げ!」と思った矢先、よりによってこの冬いちばんの寒さといわれた日の午後8時すぎ作業が始まりました。

遅れたのは「全てのものを生かして使う。」という掃除の基本精神に沿って、建築現場などから再利用できる部材を集めていたらしい。

さすがに若手社員といえども寒いらしく、コンビニから熱爛のお酒やおでんを買って、身体を暖めながらの作業になりました。

夜11時ころ「社長お!完成しましたよ!」という女子社員の黄色い声。年がいもなく全速力で二階から走り下り掃除用具置場に一直線。「ほうき」「チリトリ」「バケツ」「ゴミ袋」が整然と並んでいる。しかも名前までついて。思わずみんなで拍手。そして記念撮影。我が家で勢揃いして威張っている掃除用具たち。それを見てなぜか胸が熱くなり、こみあげてくるものを押さえることができませんでした。

(97年3月)