掃除に学ぶ

2-10 ~経営に生かす~

経営に生かす

千葉のそうじびと

東京からJRの総武線で東へ30分程行くと習志野市に〔津田沼〕という駅があります。

金子さん(㈱ホーマス・社長)は5年前より毎朝2時半起床でその〔津田沼駅〕の周辺を清掃し、数万人の通勤者に快適な朝を提供しています。この駅前の清掃は、雨が降っても風が吹いても一日として欠かすことはありません。

最初のころはたった一人の黙々とした行為であったものが、いつのまにか賛同者が増え、やがて[千葉掃除に学ぶ会]へと発展しました。

メンバー中には現職の国会議員も数名ふくまれ、中小企業の経営者、学校の教師からサラリーマン、一般の主婦まで裾野がひろがり、毎月の参加者は数百名にのぼります。

金子さんが掃除にかかわりを持ったのは、五年前友人にプレゼントしてもらった一本のカセットテープと一冊の本からでした。

その本とテープは、東京で自動車用品の卸し業を営む鍵山秀三郎さん(㈱イエローハット・社長)の[凡事徹底]です。

当時バブルの崩壊で本業の不動産業の凋落に苦しんでいた金子さんは[凡事徹底]のなかで語られている掃除哲学に共鳴し「掃除を徹底することで、荒んだ社員の心を癒し、会社を蘇生させよう」と決意したのです。千葉のそうじびと誕生です。

掃除問答

金子さんをはじめ、金子さんに共鳴する利さん(日本企画社長)、高山さん(高山測量社長)などの熱意が実り、[千葉掃除に学ぶ会]は、ことしの2日で第17回を迎えることとなりました。

この掃除に学ぶ会は、単に掃除の実習をおこなうだけでなく、先哲からの学び、新しい縁を深める交流、それに掃除の実習がセットになっています。

今回の研修では、折からの不況で苦しむ中小企業の経営者達が、鍵山秀三郎さんの経営哲学や人生哲学を学ぶことを希望し、その要望に応えて「素晴らしき人生、素晴らしき掃除」をテーマに一問一答形式でおこなわれました。

・不況で仕事が少なくなり因っていること。
・安売り競争に巻き込まれ、収益があがらなくなっていること。
・ノルマを強いられ社員のこころが荒んでいること。

などなど現在の中小企業が抱えている難問が、息つく間もなく次々と問いかけられた。

鍵山秀三郎さんはこれらの質問に対して自らの信ずるところにより、一つずつ平易な表現で懇切に答えられました。

「常に柏手のことを考える」
「小さなことを疎かにしない」
「安易な道を選ばない」
「自分に都合のよい条件を待っていても一生いい条件はこない」
「困難なことを避けない。それを克服するところに成長がある」
「仕事は売り上げや利益だけではない」
「目に見える条件を前面に出して競争すると必ず敗ける。目に見えない条件で競争する」
「物事の決断の基準は、そのことで社員は幸せになるか、である」

吹雪の中で

掃除の実習は春の吹雪の中で行なわれました。かじかんだ手足で250名の参加者は、船橋市立海神中学校のトイレ磨きに、一心不乱に取り組みました。終了後、地元の女性の心尽くしによるおにぎりを頬ばる善良の顔は、それぞれ一様に爽やかでした。

(千葉掃除に学ぶ会より)

(98年4月)