掃除に学ぶ

2-2 ~商いの原点をみる~

商いの原点をみる

びっくりしなさい

経営コンサルタントとして著名な船井幸雄先生は、商売繁盛のコツを訊ねると「びっくりすることです。」と答えられる。「そのためには繁盛している現場に足を運び、自分の眼で見ることです。」

繁盛現場を見てびっくりしないような鈍感な人間には、商売繁盛など望むべくもないことでしょうね。

地に落ちた商人道

なぜそうなったのか、門外漢のわたしに解説などできないものの、最近のマスコミ報道に見るかぎり、日本の商道が、地に落ちてしまったことがよくわかります。

日本を代表する企業の数々の不祥事が、マスコミを賑わさない日はありません。野村証券しかり、第一勧銀しかり、です。

その後の経過をみても、これら大企業のトップには、人間としての誇りや、商人としての自負心など「かけら」も見えません。

混迷のときは原点に

近代のわが国商業の基礎を築いたのは「近江商人」であることを否定するものはいません。

船井幸雄先生のことばをお借りすると「混迷のときは原点に帰れ。」ということになります。

わたし流に解釈すれば「商人魂の原点である近江商人のふるさとに足を運び、自分の眼で確かめびっくりしなさい。それが学びだ。その上でどうすることがまっとうなのか確かめなさい」ということになります。

滋賀の掃除に参加

機会があろうとなかろうと一度は近江八幡の土を踏みたいと考えていましたところ、「ブラジル掃除」でお世話になった後藤さん(滋賀ダイハツ販売・社長)から「滋賀掃除に学ぶ会」に参加しないか、とお誘いをいただきました。まさにグッドタイミング。

プログラムを見ると、近江商人の歴史を一堂に集めた[近江商人博物館]の見学。製作者の鍵山社長が解説される「てんびんの詩」の観賞。

なによりも魅力的だったのは、近代の近江商人が、一度は学んだと思われる[近江八幡商業高等学校]のトイレ掃除。

もしかしたら、近江の豪商たちが用を足したかもしれない便器を素手で磨く。自称「そうじびと」にとっては逃してはならない価値ある「滋賀の掃除」です。

収穫の多かった滋賀掃除

近江商人の、創業の原点である天秤棒も見ることができました。

近江商人の精神と歴史を学んでほしい、と鍵山さんが私財を投じて制作された映画「てんびんの詩」を、ご自身の解説を聞きながら鑑賞。感動に涙が止まらない。

数多く残された「家訓」から商売の基本を学ぶ。家訓の多くは、当時の社会道徳の根本となっている儒学の影響を受け、いずれも勤勉、倹約、正直、堅実、堪忍、知足、分限といった徳目を重視している事を学ぶ。

トイレ掃除の実践では、珍しく中学校の教師一人と、生徒二人と組合せになりました。

始めは素手で便器を磨くことに躊躇していた教師、顔をそむけていた生徒。時間が過ぎるにつれて便器磨きに夢中になっていく様子がよくわかります。

一心不乱の90分。真っ白に磨き上げた便器の前で抱き合って感動をあらわす師弟。

掃除という平凡な行為が、師弟をここまで近くし、ここまで素直にすることに、あらためて感嘆。

通り一辺の観光などでは見えないものが、掃除の中からは見えてきます。もしかしたら、豪商の小便の雫をいっぱい浴びたせいかも知れません。

(滋賀掃除に学ぶ会より)

(97年8月)