何もしなければ何も得られない 2007.5
ウイルス肝炎の現状
近年、生活環境の変化によるものか、癌の罹病率が高くなっています。早期発見と医学の進歩により、死への恐怖は少しは薄らいだものの、やはり癌は恐ろしい。
とりわけ、肝臓癌の予備軍ともいわれるウイルス肝炎(B型、C型)の患者数は、350万人と推測され、由々しき問題です。慢性肝炎から肝硬変、肝臓癌に進行する率が高いだけに、本人はもとより家族の心配も並大抵ではありません。
平成18年6月16日、最高裁判所は「わが国のB型肝炎の蔓延は、国の行政に責任がある」と、判決を下しました。
ウイルス肝炎の患者の大半は、自ら防ぎようのない原因で感染しており、早急に総合的な対策が国に求められています。
しかし、行政の対応は極めて鈍くお粗末で、患者やその家族の救済には程遠い現状にあります。
患者の声を国会へ
自分の不都合がある時は、不平・不満を並べ立て、声高に行政の批判で終わる傾向にあります。しかし、それだけでは何の解決にもなりません。まずは行動です。
大江雅雄さん(72歳)は、数少ない行動派の一人です。ウイルス肝炎の患者や家族の声を国会に届けるべく、活動を始めました。
「ウイルス肝炎総合対策の推進を求める国会連絡会」に加盟し、広島では只一人署名活動に没頭…。
特別の人脈もないことから、自分の知己を回って400筆、その他協力を仰いで計1000筆の署名獲得を目標に、昼夜を問わず奔走。
己を捨てて他のために―と尽くせば天は必ずご褒美を下さる。目指した1000筆をはるかに超える8670筆もの署名が、わずか2ヵ月で集まったのです。
大江さんは「夢かと仰天し、心の中では飛び上がって狂喜しました。信じられない驚愕の署名数で、何が起こったのか判らない感じで、只々呆気にとられました」と話しておられました。
署名の数は目標に過ぎず、目的はウイルス肝炎に感染した患者に対する国の支援です。国会議員たちの有様を見ていると、荊の道はこれからでしょうね。大江さん、頑張って!
限りなく続く喜び
第一線を退いた後の余生で、これほどの喜びがあろうとは―大江さんのしみじみした述懐…。
何もしなければ何も得られない。外に向かって一歩を踏み出すだけで、尽きぬ泉の水を汲むように喜びが次々に得られます。
いま大江さんは、地域の小学校の通学路を清掃しながら、登校する子供たちに「おはようございます」とあいさつする活動を続けておられる。即座にかわいい声で返事が返ってくる。とても微笑ましい光景です。
子供たちの笑顔は、高齢者には何よりの喜び、生きがいになるでしょうね。
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