超高齢化社会の「生きがい」チャレンジ

④親子農業体験塾「志路・竹の子学園」十年成る新たな十年を目指して更なる取り組み

④親子農業体験塾「志路・竹の子学園」十年成る新たな十年を目指して更なる取り組み

意味ある第十期の記念イベント

平成15年にプレオープンし、翌16年4月4日に新たなスタートをした親子農業体験塾『志路・竹の子学園』は、25年11月3日、設立10周年の記念セレモニーを行った。入塾記念に塾生らが植えた『キンモクセイの道』には、記念の碑が建てられた。特別参加の中田宏衆議院議員の手に紅白の綱が握られ、10年間もこの活動を支えた『志屋つくしクラブ』のナイスシニアとともに除幕式を挙行。期せずして塾生親子や関係者の感慨深い拍手が湧き起こった。

設立した当時は誰もが長続きするとは思わなかった。掲げた灯火が余りにも非現実的であり、心の荒んだ世の中に受け入れられるものではなかった。目的は①子どもの教育、②高齢者の生きがい、③過疎の活性化。唱える人は多く、誰もが願っていることだが、実践で成果を挙げるのは極めて難しい。しかも、①公費の助成は受けず自主自立、②農園管理の報酬は「いきがい」、つまり労力の無償提供、③運営経費は受益者負担で参加者持ち。「理想はいいけどね、長続きしないね。この世知辛い世の中に、ただ働きする人間はいない…」

ところが手を上げるシニアたちがいた。竹下員之さん(当時72)はじめ「金持ち」「智恵持ち」「時間持ち」のただ働きを厭わない6人の仲間たち。高額の参加費を払ってまで遠い田舎へ毎月通う物好きな親子はいないと冷やかされたが、ここにも手を上げる若い親たちがいた。足りないところは老齢年金を拠出した。長続きしないと言われながらも、10年も活動できた。最大の功労者は「いきがい」に価値観を求めたシニアたちである。彼らは愚痴一つこぼさずに都会からくる若い親子らを年寄りの頑固さでもてなした。遠慮なく分かりにくい方言で叱声を飛ばす。立ち見を許さず、柔らかい手を土にまみれさす。やがて親子らは月に一度の、自然の舞台での不自由さの中に楽しみを見つけた。

心は衰えないが、身体は老いてゆく

10年もの長い間、親子農業体験塾を支えてくれた竹下さんたちも、意気盛んだった古希を超え、とうに八十路に入った。過疎の活性化への志も、高齢者の生きがいの求めにも衰えはないが、肝心の足腰が悲鳴を上げ始めた。自分の処理さえままならないのに、若い親子の世話は傍目に見ても無理と映る。

彼らの功績を称え、後世に伝える意味も含めて『記念の碑』を建立し名前を刻んだ。10年を一区切りとして苦労から開放したかった。そして『志屋つくしクラブ』も後継者がいないまま解散した。快く受け入れてもらった。そして丸裸になった。

今日のことを予測して『人生講座』のメンバーに、子どもたちの世話をしてもらうサポーターとして助けてもらうことにした。農業のことは分からないが、高齢化社会における己の役割りは熟知している。知的好奇心も極めて旺盛である。己のことはさておいて人の喜びに奉仕する時間を惜しまない。それはこの一年間の働き振りからもうかがえる。

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当てにしていた農協は、過疎地の農業には役立たない

しかし、作物を育てるには志だけでは通用しない。年間の作付け計画、種苗の仕入れや種まき、適当な施肥や防虫の時期、収穫の時期などが『竹の子学園』の開塾日と合致しなければならない。このあたりは経験者でも難しいところだ。

地域の農協なら農家の相談相手になる指導員もいる。過疎の活性化に役立つ活動だから支援を惜しまないだろうと勝手に思い込んでいた。ところがあっさり断られた。「専任の指導員もいないし、新しいことに取り組む人的ゆとりはない。日曜日に働く職員もいない」相手にされないのだ。農業の経験がないサポーターに子どもたちに稲や野菜の育て方を教えてくれとは頼めない。

あれだけしゃかりきになってTPPに反対し、日本の農業を守ると言っている組織である。こちらの思い上がりであったかもしれないが、知らぬ顔は筋が通らない。しかし、やりたくないものに無理は言えないから自前で何とかするしかない。

今のところ頼れる人はサポーターしかいない。とりあえず第10期に協力してもらったサポーターに第11期の協力してもらう約束を取り付けた。以下の6名である。入川実さん、今野秀夫さん、田畑栄造さん、米沢隆子さん、米今菊子さん、佐藤小百合さん、いずれも現役引退したばかりの気鋭である。支援者は15年も若返ることになる。ところが米作りや野菜作りはこれから学ぶのである。

生涯学習・プランワンステージの常任講師を務める入川さん

サポーターの代表を入川実さんにお願いした。快く引き受けてもらった。親子農業体験塾の支援者グループの代表が、専業農家のベテランから団塊の世代の一流企業のエリートに代わる。入川さんは定年退職後、自らの意思で『人生講座』に学び、自らの意思で『生涯学習』の常任講師になった。取り組むテーマは専門外の「日本のことば」。それだけでも名利など求めない旺盛なチャレンジ精神の持ち主と分かる。

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知的好奇心を満足させること、人のために時間を使うことを生きがいにしている。国の名勝『縮景園』の名ガイドとして著名である。現在は『廣島城』『三滝寺』などにも挑戦している。モットーは健康な身体、健全な精神、前向きな生き方。
 
毎月第二水曜日、生涯学習講座[日本のことば」の常任講師を務めて5年を超えるが、なお人生講座で学び続ける謙虚さを持ち合わせる。機械メーカーの中国地区責任者の気配はまったく感じられない。受講生が増え続ける人気の所以であろう。

親子農業体験塾の指導者が農業従事者でなければ出来ない理由はなかろう。一流サラリーマンなればこそ「日本のことば」の講師を務めることが出来る。農協に袖にされたチャンスに、過疎地域の活動は、都会の人間でもできることを見せ付けたい。その意味でも入川さんに期待するところ大である。他のサポーターの「生きがいチャレンジ」は稿をあらためて紹介したい。