超高齢化社会の「生きがい」チャレンジ

③地域に新しい息吹を与える熟年コミュニティの創造

③地域に新しい息吹を与える熟年コミュニティの創造

サロンが新しいコミュニティを生む

生き残りを賭けた企業戦略の一環としてささやかなサロンを開いて六年目に入った。スタイルは新しいカタチの講座で対象は熟年層の男女である。メインデッ シュは「知的好奇心の満足」である。スタートしたときは何もかもが手探りであり、まさかここまで続くとは思わなかった。

呼び掛けは【こころ豊かに生きる人生講座】。始めから繁盛したわけではないが、 いつの間にか地域に定着しサロン化した。開催日は毎月第二火曜日と第四火曜日、午前と午後の二クラス。定員は八名。ささやかながら開催日と人数にはこだ わった。開催日を変動させると定着しにくい。人数は多すぎても少なすぎても講座の特性が失われる。

講座のイメージは、そこに講師がいて語り、受講生がいて学ぶスタイルだ。ところ が【人生講座】には講師がいない。受講者が交代しながら講師を務める。講座における評価の尺度を参加者相互の満足に置いた。計られるのは参加者が自己を表 現する能力と、他人の表現を理解し賞味する能力である。つまり他人に発言の機会を譲ってニッコリできる能力。そこから生まれる社交能力が講座を継続させ る。結果として一二〇回を超えるロングセラーになった。当初の戦略通りサロンが新しいコミュニティを創造した。それはビジネスを超え地域の活性化に繋がっ た。

 

知的好奇心の満足が継続のパワーになる

同業の仲間から何をやっているのかとしばしば質問された。それは参加者が実に生き生きした雰囲気に包まれて会場を後にする光景が不思議だったかららしい。いずれも笑顔に満ちており、背筋さえ真っ直ぐになったように見えるから不思議だ。

スタートは掃除の神様・鍵山秀三郎さんの【凡事徹底】。続いて素心学の権威・池 田繁美さんの【人間学】。さらに孔子の【論語】と続く。おもしろおかしくもないテーマだが、進め方によっては熟年世代を生き生きさせる。信じられないかも 知れないが、すべての人間は知的好奇心を持っており、それを満足させたいと強く願っている。そのキーは何かと考えると分かりやすい。

人生講座では相手の話を聞く、遮ってはならない、しかし、相手の時間を奪っては ならないと約束している。先述の他人に発言の機会を譲ってニッコリ出来る能力の発揮だ。さらに【日本に詳しくなろう】をテーマに学び合った。大ヒットした のは司馬遼太郎著「街道をゆく」からの知的好奇心の満足。日本の原点を求めて四十八の街道を全員で旅しながら新しい世界の道に分け入り、日本人の素晴らし さに酔い痴れた。人間は貪欲だ。新しい「生きがい」を求めチャレンジを始める。同業の仲間には見えない世界かもしれない。

 

生涯学習・プラスワンステージ

畏友・三島清一さんは一九三一年生まれだからとうに八十路を歩み始めている。人 生の大先輩に畏友などと言っては叱られるかもしれない。二〇〇一年一月に三島さんが主宰される【NTT・OB大学】でトイレ磨きをテーマに講演する機会を もらった。それが機縁となって三島さんはトイレ磨き仲間に加わった。当時の活動は地域内のJR駅のトイレ磨きを主としていた。一番電車が出る前に駅トイレ を磨き上げるのだから半端な気持ちでは続かない。③地域に新しい息吹を与える熟年コミュニティの創造

 

 

 

活動は毎週土曜日午前四時半からと決めていた。三島さんは二〇〇四年の一月から参加した。運悪くこの年の初めての土曜日は一月一日、しかも珍しく大雪だっ た。トイレ磨きは単なる掃除ではなく心磨きだから厳寒でも素手でおこなう。決心したとは言え大変な勇気が必要だったに違いない。今は地域の公園に活動の舞 台を移したが、素手によるトイレ掃除に変わりはない。まもなく十年の節目を迎える。まさに「十年偉大なり」である。

三島さんは上級生涯生活設計コンサルタントであり、チャレンジ精神は極めて旺盛である。かねてから【人生講座】に加え、新しいステージに挑戦した構想を 持っていた。地域の活性化には熟年世代の覚醒が必要不可欠であることは言うまでもない。少々格好付け過ぎだとは思ったが【生涯学習・プラスワンステージ】 と銘打った。テーマは「日本」。

 

毎月第一水曜日は「日本のしきたり」を学ぶ

火曜日は【人生講座】の日、水曜日は【生涯学習】の日と決め、三島さんと図って 二〇〇九年六月にスタートした。第一水曜日は三島さん担当で「日本のしきたり」。さらに第二水曜日を担当する入川実さんの「日本のことば」、第三水曜日は 小山正さんの「古代への道」、第四水曜日は半田和志さんの「広島学」と常任講師が決まりラインアップも揃った。

テーマは目論見どおり「日本」にこだわった。それぞれテーマを担当してもらっているが、その道のプロではない。与えられたテーマにチャレンジして常任講師 を務めることになる。今の社会は物に溢れており欲しいものは大抵手に入る。特に熟年世代にとってモノの豊かさに価値を見出せない。今求められているのは心 の豊かさと日々の精神的充足感である。講座ではその価値を参加者に提供しなければならない。

三島さんは「笑いヨガ」のリーダー資格を取得し、講座に新しい価値を添えた。講座には【人生講座】以外の新しいメンバーが続々参加、新しい世界を創りはじ めた。そこには新しいスタイルのコミュニティが生まれた。口幅ったいようだが一連の試みは、超高齢化社会に斬新な世界を提供し続けている。チャレンジは成 功しつつある。

 

③地域に新しい息吹を与える熟年コミュニティの創造

 

講座の仕組みと入川さん、小山さん、半田さんの取り組みと、講座の仕組みは稿を改めて紹介したい。