世相藪睨み

巻頭言

[巻頭言]

身近な「気づき」から、世相の核心に迫る

 木原伸雄さんとは、「掃除の道」を歩く中で、ご縁をいただきました。

「トイレ掃除は心を磨き、人と人の結び付きを磨く」と、木原さんも述べておられますように、私自身も掃除活動から、実に多くのことに気付かされ、未熟な人間性を補わさせてもらい、木原さんをはじめとする数多くの志高い方々との揺るぎない信頼関係を築かせていただいています。

中田 宏
 (横浜市長 前衆議院議員)

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 木原さんによる24項目にわたる「ちょっと・と-く」は、いずれも現代の世相の核心に迫る内容で、大いに啓発されます。掃除などをはじめ日常の生活を通して、木原さんが「ちょっと」気付いたことを題材にして日本社会のモラル低下への懸念、激動の時代環境を乗り切る経営者としての苦労、未来を担う子どもたちに寄せる期待、あるいは改革が一向に進まない国政に関する叱咤や提言などにまで及び、鋭く多彩に熱意を込めて、「と-く」は拡がっていきます。

 「掃除人」を自認され実践されている木原さんならではの視点であり、着眼ですが、私にとっては、世相を読み解き、次の一手を考えるヒントを与えてもらっています。

「何ともやるせない世相である。まともなことが隅へと追いやられ、無理難題が唯々として通る世の中になってしまったのか。景気はどん底でも、人の心まで卑しめたくないと、つくづく思う」・・・。本書からの抜粋です。

 憂いが深まる中でも、決して希望を見失わず、勇気をもって「心を磨き続けていく」力強い精神と本物の姿勢に、あらためて学ばせていただくとともに、新たなる勇気と意欲を奮い起こしています。

 私の政治家としての原点は、「身の回りの掃除もできない人間に、世の中の掃除はできない」という松下幸之助氏の教えです。松下政経塾時代の私は、仲間と共に毎朝6時前に起床して朝食前の掃除を続けることで、実は、高邁なる議論よりも身の回りの掃除によって、様々なことに気付かされることを知りました。

 この松下政経塾時代に、「掃除道」に導いてくださったのが、㈱イエローハットの創業者であり、今や「掃除の神様」ともいわれる鍵山秀三郎氏です。政経塾生一年目の秋、鍵山氏は、私たちを前に講話を終えると、すぐに塾内のトイレに行き実際にスポンジを直接持って、便器に素手を突っ込んで掃除を始められました。

 鍵山氏との強烈な出会いは、私の運命を変えたのです。

 その後まさに公私にわたりご指導を受けることになり、今も政治家として、一人の人間として、私の行動の仕方を選択する上で、鍵山氏抜きには全く考えられません。そんなご縁続きによって、かけがえのない木原さんとの出会いにも恵まれたのでした。

 木原さんは、私が衆議院議員だった時代から、毎年欠かさず広島で、有志の方々と共に「万緑の会」と銘打って、私を囲む懇談の場を設けてくださっており、それは横浜市長に就任した現在も続いています。私にとって、自分の身体を一見して自らと無関係、無利益な地域に運んで交流することは、本当の意味で日本全体の構想を考えることができる、またとない貴重な機会にもなっています。

 私は相変わらず、掃除も、政治家としての仕事も、無我夢中の毎日です。日常での「気づき」があっても、それらを頭の中でまだ完全に整理できないままでいます。

 しかし、さすがは木原さん。掃除を通して得た「気づき」が、すべてに当てはまることを、きちんと整理してくださいました。私にとって頭の中でつながっていない数々のことを、ありがたくも本書から学び取らせていただいています。

 そして、学んだことは、「いい勉強になった」と言って終わるのではなく、実際に役立てて、しつかり実践いたします。