平成24年6月29日(No5671)   大正力は泣いている

大正力は泣いている

日本の政界は犯罪やスキャンダルに寛容だ。刑事被告人でも表舞台で堂々と振舞う。秘書が、法律が、忘れた、記憶にないなど、一般社会では考えられない言い訳が通用する。その点スポーツ界は極めて厳しい。フライデーされると、即日二軍に落とされて謹慎。愛? の鉄拳でも振り回そうものなら解雇、高校生の喫煙程度でも甲子園出場自粛など…。

 

「巨人軍は球界の紳士たれ」と創設者の正力松太郎氏は、厳しく戒めてきた。それは選手にとってもファンにとっても、「誇り」だったはずである。「紳士」や「誇り」の定義が変わったのか、昨今の巨人軍の有り様は異常である。昨年の球団内のもめごとはいまなお係争中である。更に問題勃発。原辰徳監督が秘め事をタネに恐喝されて1億円支払った。

 

巨人軍の渡辺恒雄会長は「原君に相手が暴力団だったという認識はなかった。認識がないものに罪はない。だから被害者である。謝罪する必要はない」。こんなでたらめ論法をマスコミのトップが臆面もなく披瀝する。原監督は新聞に事実を認めた文書を出した上、選手たちに騒ぎを引き起こして申し訳なかったと謝罪したが、厚顔にもベンチで指揮を取っている。

 

渡辺会長は恥じる風もなく、来期も指揮を取らせると言明した。この人たちの倫理観は狂っているのではないか。不倫だけでも謹慎に該当する。それをネタに脅迫されて1億円もの大金を支払っている。相手が暴力団であろうとなかろうと脅迫に屈したのだ。まず自ら謹慎、辞任を申し出るべきであろうし、球団は毅然とした処分をするのが当然だ。堕ちた巨人軍の姿を見て、大正力は草葉の陰で泣いているに違いない。

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