続・世相藪睨み

No.1 ~過疎地の活性化に生かしたい「土嚢ハウス」プロジェクト~

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『ゆとり教育』の反省に危惧

この程、中央教育審議会は『ゆとり教育』の行き詰まりについて「理念は間違っていないが、やり方に問題があった」と反省の弁を述べた。

 現行の指導要領は、「生きる力」の涵養(かんよう)を理念としている。自ら学び、主体的に判断し、問題を解決する能力、豊かな人間性などを指す言葉だという。中教審は「生きる力は知識基盤社会の中で、ますます重要になっている」として、理念を引き継ぐ。

 しかし「詰め込み」から「ゆとり」へ、さらに「脱ゆとり」転換に危惧を感じる。「ゆとり」と決別する一方で、「生きる力」を継承するという曖昧な折衷案は、教育現場を混乱させ、今後に問題を残す。「学力」と「生きる力」はどちらが大事か…ではなく、どちらも大切なのである。「読み、書き、そろばん、話す」を徹底して詰め込みながら、「自ら学び取る能力、社会規範を守る意識、民主主義のルール」を学校教育、家庭教育、地域の協力で学ばせる重要性は変わらない。

 小学校五、六年では英語授業がスタートするが、正しい日本語の習得が先ではないか。英語を不要とは言わないが、子供たちには効果以上の負担感が生まれそうだ。日本語の乱れは、「生きる力」を涵養する理念の足を引っ張っている。

青空に吸い込まれた200個の風船

平成19年11月4日、雲一つない秋晴れの下で、第四期『親子農業体験塾・志路竹の子学園』の卒塾式を開いた。過疎集落の自然を舞台に、22名の塾生と保護者、それに支援する地域の高齢者たちが、至る所で感動的なシーンを繰り広げた。

 平成14年の「詰め込み教育」から『ゆとり教育』への大転換を機に、「生きる力」を養うには、自然体験、農業体験は欠かせない- と地域の有志と共にスタートした活動である。

 5000坪の大舞台は、子供らの自由な発想力や好奇心を育ててくれた。月に一度の開塾であるが、都会の混雑や規制の中で戸惑いながら暮らしている親子には、穏やかな自然に包まれた環境が、心の縛りを解き放つ良い機会であったに違いない。

 学園では稲をはじめ、16種類の野菜を栽培している。その生育過程を体験しながら、自然の偉大さや恵みを知り、同時に台風や洪水、それに猛暑、冷害の恐さを学び取ったと思う。机の上では教えられないことばかりだが「生きる力」は養える。

 過疎の集落で暮らす心温かい高齢者たちとの出会いは、索漠(さくばく)とした都会では味わえない得難い体験だろう。

 お別れセレモニーを締め括ったのは、完成したばかりの「土嚢(どのう)ハウス」のドーム天井から舞い上がった色とりどりの200の風船。子供たちの未来を予感させるかのように、鮮やかな青空に吸い込まれていった。

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銀色に輝く「土裏ハウス」は、意外にも自然の舞台に溶け込んでいる。

「土嚢ハウス・ヴィレッジ」構想

 今年の8月、広島大学の町田宗鳳(まちだそうほう)教授(大学院総合科学研究科)から、暑さを吹き飛ばすような爽やかなメッセージがFAXで届いた。

 <鍵山秀三郎さん(イエローハット創業者>からご紹介いただいた。現在、本学の大学院生たちと「土嚢ハウス・プロジェクト」を企画している。親子農業体験塾「竹の子学園」の活動に生かせないか(要約)…>

 著名な学者にありがちな尊大さは見られず、謙虚で丁重なご提案に感動し、広島大学を訪問した。

 アフガニスタン難民救済に力を入れてきた天理大学のキャンパスには、研修用に7棟の土嚢ハウスが建立され、現存している。他に滋賀県の琵琶湖畔、兵庫県の丘陵にも1棟ずつ姿を見せている。これらの写真や資料を拝見しながら、町田教授のプロジェクトに対する熱い思いを拝聴した。土嚢ハウスとしては日本で4番目だが、ヴィレッジ(村)の構想では初の試みとなる。「竹の子学園」としては嬉しいご提案で、全面的なご協力をその場で申し出た。

 10月26日から3日間、集落の協力者、学生やボランティア、それに見学にきた「竹の子学園」の塾生親子まで汗を流して、直径3m、高さ約5mの土嚢ハウスが完成した。

 急いで着手したのは、設計者で工事指導を担当する渡辺菊真(わたなべきくま)さん(渡辺豊和建築工房代表)が、年末から2年間、「土嚢ハウス」作りの指導にヨルダンヘ出張されるからだ。

設計・施工指導の建築家・
渡辺菊真さん(奈良市在住)
渡辺菊真さん
町田宗鳳・広島大学教授
土嚢の突き固めに汗を流す
プロジェクトリーダーの
町田宗鳳・広島大学教授

都市と農村の交流拠点作り

 プロジェクトの目的、問題意識、思想的背景、構造、機能、全体図については稿を改めてご紹介したい。

 今のところ試作棟を1棟完成したところだが、第5期「竹の子学園」のカリキュラムに導入の予定。

 できれば5年程度で、町田教授の企画に沿って「土嚢ハウス・ヴィレッジ」のメインハウス、サブハウスなど、合わせて5棟を建立し、小さな村を構成したいと願っている。

 急速に進む過疎集落の活性化、高齢者の生きがい、子供らの豊かな人格形成-- を目指す「竹の子学園」の理念、3つの目的達成には最適のプロジェクトになる予感がする。

 加えて新しく多彩な機能を持った都市と農村の交流拠点が誕生し、子供や若者だけではなく、高齢者も含めて生きがい創生の場になり得る。

 わが国は世界で最も平和な国であるが、その一方で家庭や教育の荒廃、精神の疾患や自殺の増加など、人間の心に由来する問題が生まれ、悲しむべき社会現象が増えている。

 多くの識者たちはこれらの諸問題を批判・論評することがあっても、その状況を改善するための行動を起こすことは稀である。

 親子農業体験塾『志路・竹の子学園』の活動を中核とし、新たに『土嚢ハウス・ヴィレッジ』のプロジェクトを加えて、過疎地の活性化に向けて意義ある活動を展開したい。