世相藪睨み

No.10 ~トイレ磨きは心磨き~

トイレ磨きは心磨き

卒業記念にトイレ掃除

今年の3月、広島市立落合小学校の卒業生たちが、卒業記念にトイレ掃除をした。トイレ掃除とはいえ、棒ずりでこすって水を流して終わりというような簡単な作業ではない。

事の発端は、総合的な学習の一環として、同校の六年生が「環境問題に関する企業の取り組みについて、インタビューをしたい」と我が社を訪問してくれたことからである。

そのインタビューの中で、私たちが取り組んでいる地域美化活動の一つである「JR駅のトイレ掃除」に対して、子供たちは強い関心を示した。これに質問も集中したほど。

そして、「学校のトイレは、汚れていて匂いがきつい。自分たちで便器をピカピカにして卒業したい。掃除を教えてほしい」と、子供たちは目を輝かせた。

最初は有志7人ほどであったが、いつの間にか卒業生全員の83人にまで、参加者の輪が増えたのである。

我が社の取り組んでいるトイレ掃除は本格的で、徹底しており、すべて素手で行う。黄ばみを取り除き、尿石までも除去する。

子供たちは、指導する私たちにも負けないくらい懸命に取り組み、全校のトイレをピカピカに変えてしまった。まさに『卒業記念・トイレ磨き』である。

子供らのまとめた感想文集を発行

子供たちにとって、汚いトイレ磨きは初めての経験で、当初は戸惑ったに違いない。もしかしたらイヤだったのかもしれない。しかし、便器が輝くにつれて夢中になっていく。

そんな心の動きを子供たちは感想文にまとめて、私に届けてくれた。読み進むうち、あまりにも純真で無垢な彼らの姿を知って、感動で涙が止まらなかった。

「これこそ記録に残しておこう。彼らが大きくなってから、小学校6年時の自分の感想文を読んだら、きっと何かを感じ取ってくれるに違いない」

早速、制作・製本に取りかかり、B6判・100ページの小冊子として仕上がった。初版はコスト面を配慮し、5000部だけ発行した。タイトルは『卒業記念・トイレ磨き』感想文集。

なんと、この5000部がたったの二週間で、掃除仲間の手を通じて全国各地に飛び散って行ったではないか…。

しかも、この感想文集は思いもかけない波紋を巻き起こして、実は驚いている。

トイレ掃除で「心を磨きたい」

まず、『卒業記念・トイレ磨き』を読んだ三重県松阪市立斎宮小学校の教師が、心を磨く学習として、トイレ掃除の実践活動を取り入れたのである。

「便器に手を入れる前は、匂いや汚れが気になるが、いざ手を入れてみると、どうってことはない」と実体験した子供たちの反響…。

さらに、奈良市立三笠中学校で開催された「奈良掃除に学ぶ会」では、うれしいことに中学生の参加が150人に及んだ。感想文集に啓発され、一般参加者に倍する子供たちが、トイレ磨きに汗を流した。

その次は、庄原市内の「庄原掃除に学ぶ会」でも、子供たちの参加が目立った。

私は、これらの掃除の会すべてに参加し、リーダーの一人として、子供たちと一緒にトイレ磨きに打ち込んだ。

子供たちは言う。「トイレの汚れは、自分の心の汚れだと思う。トイレを磨くことで、自分の心を磨きたい」…。

今どきの教師たちにも聞かせてあげたくなる。子供たちの素直な感想だが、意味は深い。子供たちと比べても、教師らのトイレ掃除参加はあまりにも少なすぎる。「今どきの子供たちは…」とよく言われるが、逆に「今どきの大人たちは…」と、子供たちの方が思っているのではなかろうか。

(2001年10月号掲載)