続・世相藪睨み

No.11 ~軽きがゆえに漂流つづける総理の椅子~

No.9 ~子供は無限の才能を秘めている。親の責任でチャンスを与えたい。~No.9 ~子供は無限の才能を秘めている。親の責任でチャンスを与えたい。~seso_11_00

鳩山大臣がポテンヒット

 止めたバットにボールが当たり運よく野手の間に落ちた。ポテンヒットになった。結果的にビッグイニングを作った。そんな鳩山邦夫総務大臣の直観的な発言が「かんぼの宿」一括譲渡問題に待ったを掛けた。

 すでに日本郵政はオリックス不動産と「かんぼの宿」70箇所の一括譲渡契約を締結していた。それについて鳩山さんが「安すぎる」と、いちゃもんを付けたのが発端だ。その時点で鳩山さんは闇に包まれた契約の詳細はご存じなかったと思うが、幸運にも大問題に発展した。

 一旦契約した案件を大臣権限で被棄するのなら、鳩山さんはデータに裏打ちされた動かぬ証拠を突き付けてストップを掛けるべきだろう。

 譲渡は27社が応募し、2度の競争入札で決まった。少なくともこれまでの手続きに、落ち度はないと日本郵政側は説明。オリックスの経歴や宮内義彦さんの過去の言動を理由にして、所管大臣が口出しするのは許認可権の乱用と言える。

 幸いと言うべきか鳩山発言をきっかけとして、次から次へと怪しげな契約のからくりが見え始めた。

 島根県岩見町の「かんぼの宿」は旧郵政公社が不動産業者に1万円で売却し、半年後に6千万円で転売したという。まさに濡れ手に粟。このような税金の無駄使いケースは、全国至るところに存在する。

 今回、一括契約で問題になつた79箇所の簿価は資産から負債を引いた純資産額が約93億円で、オリックスがそれを上回る109億円で落札したものだ。

 これらの施設は建設費や用地取得費に2400億円にのぼる巨額の税金が投入されたが、「減損処理」の操作によって簿価は二十分の一に圧縮されている。過剰投資や人件費のコスト負担が原因らしいが、その責任を誰一人として取っていない。無駄な税金の流用は犯罪に等しい。
 
 契約の経緯にばかり目を奪われて、日本郵政の経営改善という本筋の議論が抹殺されると、将来に大きな禍根を遺すことになりかねない。

 

麻生首相の呆れた迷言

 これらの混迷を野党が見逃すはずもない。民主、社民、国民新の野党三党は、かんぼの宿などの譲渡に関する疑惑追及プロジェクトチームを立ち上げた。結果的に麻生政権を追い込む結果になるだろうが、国民の税金が正しく使われているか- の視点で徹底的に明らかにしてほしい。

 それにしても麻生太郎首相は希代の大虚(おおうつ)けか、それとも凡人には計れない大政治家なのか。

 昨年9月、凋落著しい自民党再生の顔として、圧倒的な党員の支持を受けて麻生さんは首相に選ばれた。

 以来、喫緊の課題である公務員改革、定額給付金、消費税の値上げ、道路特定財源問題、挙げ句の果てには郵政改革の混迷まで、呆れるほどぶれ続けた。とくに衆議院の予算委員会における郵政改革見直し問題では、うっかり発言? の綻びを縫い合わせるために、矛盾を存分にさらけだした。後世に残る迷言集だ。

 首相は自身が総務相を務めた小泉内閣の郵政民営化方針に「反対だった」と述べた。閣僚として署名しているにもかかわらずだ。その舌の根も乾かぬうちに「民営化したほうがいい。最終的にはそう思った」。

 「郵政民営化の担当大臣は竹中さんで、私ではなかった」と不快感を表明。ところが昨年9月の自民党総裁選では「間違えてもらっては困るが、私が総務相として郵政民営化を担当した」と鼻高々。さらに「総務相を二期務め、一期目は役割を果たしたが、二期目は反対したから外された」と辻褄合わせをした。

 定額給付金についても、ころころ臆面もなく発言を変えた。高額所得者が受け取るのは「さもしい」と言いながら、一転してみんな受け取ってじゃんじゃん使え…。いつのまにか生活支援が景気対策に衣替え。それでも「私の言っていることは、ずっと一貫している」とは厚顔無恥。道路特定財源の一般財源化では、常人では思いつかない非論理的答弁に終始した。当初は一般財源化した1兆円を地方が自由に使える「地方交付税」にすると宣言した。ところが道路族議員たちに反発されると腰砕けし、2009年度予算には反映されず、地方の期待を裏切った罪は限りなく重い。

 発言は雰囲気に流されて「うっかり」が多い。訂正して謝ればいいのに、辻褄合わせに終始するから強弁で押し通す。能天気に言葉足らずが絡むから、野党も責め手を見失い国民不在の不毛の議論が続く。

 威厳を欠き差恥心のない首相の存在は、国民に失望を与え不幸をもたらす。

 

軽口で失った総理の威厳

 郵政民営化は小泉純一郎元首相がその是非を国民に問うたテーマである。有権者の多くは賛同し、先の総選挙で自民党に圧勝させた。

 麻生さんが本気で反対ならば、郵政民営化を争点にして総選挙を戦えばいい。それが男の道というものだ。

 その度胸も力もないくせに「反対だったから濡れ衣を着せられるのは面白くない」などと女々しい言い訳をするのは、一国の総理として余りにも情けない。民主党の渡部恒三さんに「男らしくない」と揶揄されたり、前原誠司さんに「やるやる詐欺だ」と面罵されても仕方がなかろう。
 
 「綸言汗の如し」というが、ここまで言葉を軽んじては、首相の地位を無にしたに等しい。もはや日本国の最高権力者とは言えない。

 講読している読売新聞の2月12日付け・編集手帳に辛殊なコラムが掲載されていた。叱られるかもしれないが引用させていただく。

 《大相撲の決まり手は「四十八手」と言われるが、現在では八十七手を数える。八十二手は勝者の掛けた技、残る五手が敗者の自滅で「非技」という。
◆(勇み足)や(腰砕け)は日常の会話にも使われる。バランスを崩した(つき手) (つき膝)、戦意なく土俵を割る(踏み出し)と非技もいろいろだが、観客には興醒めの決まり手であることに変わりはない。
◆野党に技を掛けられたのならまだしも、勝手にこけた首相の(つき手)黒星を喫しては、閣僚や与党の幹部が顔をしかめるのも分かる。本誌の世論調査では麻生内閣の支持率が19.7%と2割を切った
◆麻生首相の郵政発言が響いたとみられている。小泉内閣で郵政民営化を決めたときに閣僚でいた人が、この期に及んで「実は反対だった」と語る必要はどこにもなかった。首相は発言を修正したが「総理の椅子に執心して信念を曲げた人」という印象を国民に植え付けたのは痛手だろう
◆ふんどしならぬ口もとをきりりと締め直さなければ、いずれ迎える総選挙の大一番で、非技の(踏み出し)の憂き目を見ないとも限らない》