世相藪睨み

No.11 ~矛盾だらけの医療保険~

矛盾だらけの医療保険

弱者に偏る改革の痛み

危惧されていた医療保険財政が、やはり破綻寸前にあるという。国民の医療費は、1999年度で30兆円を超え、一人当たり約24万円強にもなる。注目すべき大問題だ。

医療費の伸び率も、最近は増加基調で推移している。特に高齢者層の伸び率は著しく、1999年度は対前年比で8%強もアップになった。どうにかならないものか…。

高齢者の医療費が増加する主な原因は、長期入院にあるといわれる。日本の平均入院日数は、欧米の約3倍にも当たる30日を超える― というから異常だ。

しかもその入院は、医療よりも介護が必要な高齢者の「社会的入院」が多い。そのことの是非を論じる場合でないが、少なくとも正常とは言えない。

あれやこれやの理由があって、医療保険財政が座礁間際になった。

それを防ぐために、厚生労働省が2002年度の医療保険制度改革試案を公表した。高齢者層を中心に増え続ける医療費を抑制し、医療保険財政の破綻を防ぐのが狙いだ。

「無駄を省いて、効率的な医療供給体制を構築…」などと、一応お題目を掲げているが、具体策の中身は患者負担の引き上げに偏っている。弱い者いじめといえよう。

「改革」といえば聞こえは良いが、要するに取りやすいところから取るという、いつものパターンである。やりきれない。

「自分は自分で守れ!」の試案に憤る

要するに、厚生労働省の改革案は、患者負担の金額を上げて医者にかかりにくくして、医療費を抑制しようという平凡な内容…。

医療費を負担できなければ、自らの努力で健康を維持し、医者のお世話にならないでも済む日々を過ごせ― ということなのか。

試案では、私たち現役の患者負担率は二割から三割にアップされる。70~74歳の人は、一割から二割に負担がアップ。75歳以上の高齢者も、一割負担に統一される。それだけではない。現役はボーナスからも給料と同率の保険料を徴収されるので、サラリーマンも企業もふところの痛みは避けられない。

ともかくも試案を一目見れば、患者側の痛みはよく分かる。ところが医療サービス側や支払い側の痛みについては、まるで見えてこない。中途半端にも程があろう。

診療報酬の是正、薬価基準の見直し、医療の質の向上、過剰診療や無用な検査のチェック、患者側の不必要な受診などについては、何一つ明らかにされていない。支払い側の改革などは、まさに闇の中である。

不透明すぎる患者負担の内訳

私は糖尿病患者である。そのため、月に一度は医師の診察を受け、検査し、投薬される。もっとも、忙しいときには、妻に頼んで、薬だけを受け取りに行かせている。

ところが、本人が診察を受けたときも、妻が薬だけをもらったときも、費用はさして変わらないではないか。納得がいかないので、請求明細書をもらってきた。

それを見てびっくり。妻が薬のみ受け取った日の明細書である。私本人は医師と接触していない。それなのに再診料1310円(支払い換算、以下同じ)、指導料2250円、その他960円、合計4520円。負担率が二割だから、支払い額は900円となる。薬代は別に1600円の負担。つまり、何もしないのに医師側は4520円も収入となるのだが、どうも釈然としない。

このような矛盾を数多く抱え込んだまま、弱い患者側にだけシワ寄せしていると、やがては医療保険制度そのものが崩壊しかねない。

今こそ積年の矛盾や問題点に、蛮勇を奮って改革のメスを入れるときではないのか。

(2001年11月号掲載)