世相藪睨み

No.17 ~心すさむ「どん底景気」~

心すさむ「どん底景気」

「もうバンザイしかない」

不況はとうとう来るべき局面まで来てしまったようだ。公共工事も民間工事も、とどまるところを知らず激しいダンピング合戦が続いている。

広島県は、建設工事に係る入札・契約制度における透明性、競争性を向上させる観点から、予定価格の事前公表の対象を、工費一億円以上の工事すべてに拡大するという。

このことは、企業努力で可能な価格よりもさらに低い価格での落札を促進させるばかりか、受注合戦の熾烈さに拍車を掛ける結果を招きそうだ。

土木関係の友人がこばしていた。「必死の思いで予定価格の6掛けで応札した。だが5掛けの業者が落札。次の機会に、負けじと5掛けで臨んだら、4掛けの業者が落札した。6掛けでも採算はとれない。かといって遊んでいるわけにもいかないし…。もうバンザイするしかないよ」

 

小泉構造改革の成果?

「以前は、とにかく良かった」と言う。順番さえ待っていれば、ほぼ予定価格で落札できていたそうだ。談合の習慣が、曲がりなりにも企業の経営を支えてきたといえよう。

ところが、公正取引委員会の摘発などにより、談合が不可能になった。入札・契約制度は、透明性と競争性第一に変わってきた。

追い打ちをかけるように、不況が進んで仕事量が激減。こうなるとカのあるものには勝てない。それで「もうバンザイするしかない」という泣きが入ったようだ。

例えば、5掛け(半値)の受注で採算が取れるとしたら、公共工事の予定価格なるものは、相当いいかげんなシロモノと言えないか。疑問が湧いてくる。

国民の血税を野放図に使いまくって、足りなければ、先のことなども全く考えず借金する。その上、談合などの悪しき習慣を黙認して、業者を保護してきたと一言えなくもない。

そんなお役所仕事のツケが今ごろ回ってきて、悲鳴を上げているのかもしれない。

とすれば、この状態はやがて落ち着いてくる。お役人は税金を安易に使わなくなるだろう。正しい予定価格の積算もするだろう。業者は企業努力でコストを下げ、ダンピングによる粗悪工事もしなくなるだろう。

もしかすると、これは小泉構造改革の落としどころなのか…?

無理難題がまかり通る

受注する価格のダンピング競争は、民間工事にも波及して、ひどい現象も数多い。

身近な実例を挙げてみる…・。

久しぶりに我が社では大型リフォーム工事の引き合いがあった。不況時だけに慎重に積算して、見積書を提出した。

しかし、依頼主は内容も確認せずに「見積価格から3割を値引きしろ」と、頭ごなしに言う。その上に「商品は希望小売価格の半値が常識だ」と、無理を言う。

昨今は仕事の少ないときだから、引き合いがあるだけでも有り難いと思え― というご託宣である。

大型工事だけに受注できれば、我が社の担当者にとっては2カ月分のノルマに相当する。のどから手が出るほど仕事は欲しい。

そこで、本音を担当者に尋ねてみた。「そんなにダンピングをして、まっとうな仕事が出来るのか。施主のために真心を尽くせるのか」

担当者は「ノー」と、明確に答える。従って、我が社は丁重にお断りをした。別の業者が直ちにその仕事をさらっていった。

何ともやるせない世相である。まともなことが隅へと追いやられ、無理難題が唯々として通る世の中になってしまったのか。

景気はどん底でも、人の心まで卑しめたくないと、つくづく思う。

(2002年5月号掲載)