世相藪睨み

No.18 ~貧しい国から大いに学ぶ~

貧しい国から大いに学ぶ

世界一貧しい国を訪問

今年のゴールデンウイークには、上甲晃氏(松下政経塾・元副塾長)が主宰される《志・ネットワーク》の一員として、バングラデシュを訪問した。今回で二度目。

世界一貧しい国といわれる同国では、北海道の二倍程度の国土に一億二千六百万人もの国民がひしめき合って暮らしている。

独立後三十年と歴史が浅いためか、いまだ貧困を克服できず、国民一人当たりのGDPは四万九千三百余円という信じられない最低レベルにある。

日本とバングラデシュは極めて親しい関係にあり、日本から有償無償を含めて400億円を超える経済援助を行っているものの、その成果が上がらないのが現状である。

「どんなにお金やモノを援助してもらっても、この国は何も変わらない。それどころか、依存心ばかりが拡大している」と、嘆く地元のリーダーたちの声すら、元気がない。

何でもトライしてみる

難しい話はさておき、何歳になっても好奇心旺盛な私は、二度日の訪問ともあって、突撃精神でいろいろとチャレンジしてみた。

厚かましくも、ビジネスセミナーの講師も務めた。ノーベル平和賞の有力候補であるグラミン銀行総裁のムハマド・ユヌス氏を囲む懇談会にも参加。そこで今、世界を変えつつある「貧者の銀行」について学んだ。

「銀行は、銀行の利益のために存在しているのではない。貧困なき世界をつくるためにある」というお話には心を動かされた。

一例を挙げると―。融資の対象者は貧しい家の女性に限る。どんなに困窮していても無担保で融資する。銀行員が借り手の元へ出向く。それでいて、返済率は99%。不良債権は1%以下という。画期的な仕組み…。

平然と貸しはがしを行う、どこかの国の銀行頭取らに、ぜひ聞かせてやりたい。

ホームステイにも果敢にトライしてみた。ベンガル語も英語も話せないので、言葉の壁が難関だったけれども、何とかなるものだ。

その国の人間を知るには一緒に暮らすのが一番手っ取り早い。わずか一泊二日で十年来の友にもなれる。彼らは貧しい。それだけにモノを大切にする。暮らしぶりは極めて質素である。食事の後の生ゴミは一切出さない。自然をも汚さない。徹底している。

しかし、その暮らしぶりが、浪費に慣れた私には実に豊かに感じられるから不思議だ。電気、ガス、水道のない日常生活が「不便」というよりも、快適でさえある。

必死に学び、働く子供たちの姿

十年制の学校も訪れてみた。700名の生徒が二部交代で学んでいる。彼らは半日働いて、半日学校で学ぶ。働かなければ学校に行けない。学校にも電気、ガス、水道はない。成人の識字率40%というこの国では、ともかく字を覚えることが将来を決める。

だから学ぶことに必死である。就職するためには、十年制の学校を卒業することが最低条件となる。しかも、失業率50%という厳しい現実の就職事情が立ちはだかっている。

教師も生徒も生きていくために、死に物狂いである。『ゆとり教育』などと、屁理屈を並べている暇なんて全くない。

彼らは貧しいとはいえ、一生懸命になれるものを持っている。それだけに幸せだろう。一生懸命に取り組めるものもない日本の若者は、豊かすぎて逆に不幸せなのではないか?

百聞は一見にしかず。世界一貧しい国を一度は訪れるようお勧めしたい。
(2002年6月号掲載)