世相藪睨み

No.19 ~共に生きる姿勢~

共に生きる姿勢

依然として先行き不透明な景気

政府の月例経済報告では、日本経済の基調判断について2002年2月まで「悪化を続けている」と下降傾向を示してきたが、3月には「一部下げ止まりの兆し」と表現。続いて4月には「底入れに向けた動き」、5月には「景気底入れ」を宣言した。本当にそうなのか?

一方、日銀が発表した5月の金融経済月報では、家計や雇用の悪化から底入れ判断を見送っている。政府と日銀の景気判断は必ずしも一致せず、企業や家庭を守る側には先行きの景気不透明感がぬぐいきれない。困る。

竹中平蔵経済財政担当相は、記者会見で「底入れの意味は、悪化傾向に歯止めがかかったという認識だ。直ちに景気が回復に向かうかどうかについては引き続き注視を要する」と、微妙な言い回しに終始した。まるで評論家…。

「底入れ宣言」は「景気回復」とは、似て非なるもののようである。あきれた宣言だ。

このような暗い景況感の中にあって、自動車メーカー上位三社はそろって最高収益を達成したというから、なんともうらやましいニュースといえる。なぜか…? 実態を知りたい。

自動車三社三様の最高益

日本を代表するトヨタ、ホンダ、ニッサンの自動車主力三社は、不況下にあっても、それぞれ最高収益を実現させた。中でもトヨタの純利益は、一兆円にも達したという。

自動車産業はアセンブル産業であるから、最高益を支えてきた系列の部品会社の決算を見ると、それぞれ特徴があり、実に興味深い。

系列解体を進めるニッサン系列の部品各社は、一社を除いて軒並み大幅減益となっている。中には赤字転落した企業も少なくない。

コスト削減要求は生産台数が増えてこそ叶えられる。ニッサン系各社は、国内生産減少と単価引き下げ要求のダブルパンチで見事に沈んだ。

対照的に、本体の収益拡大が系列各社に反映したのが、共存共栄を標榜するトヨタ、ホンダ系列である。とりわけホンダ系各社は、いずれも最高収益が相次いだ。好調な新車販売の恩恵を受けたうえ、効率の高い生産手法が高収益を支えた。

トヨタの国内販売は低迷したものの、トヨタ本体と一体で進めた原価低減活動が成果を挙げている。単価引き下げを一方的に要求するだけでなく、系列各社と一体となって創意工夫する姿勢に学ぶことは多い。

不況下の高収益社から学ぶこと

自動車主要三社の高収益に比べ、建設業界はゼネコンから零細工務店まで、長引く不況に息も絶え絶えである。息抜きの酒など、発泡酒どころか烏龍茶もままならない実情だ。

これまで建設業界は、元請けが苦しくなると、そのしわよせを下請けに肩代わりさせてきた。不況もここまでくると、その手段さえ使えず、幕を引く企業の急増が目立つ。

元請けからの値引き要求に、下請けはぎりぎりまで応じる。だが限界を超えると、自ら元請けを見捨ててしまう。

今や建設業界で生き残っているのは、下請けに利益を上げさせてきた企業だけである。下請けの生き血を吸ってきた企業は、軒並み姿を消し去っていく運命といえようか。

これからの時代、我々の会社も生き残ろうとすれば、まず下請けが利益を上げられるよう工夫しなければならない。そうすれば下請け側の方から元請けに利益を返してくれる。

元請けは下請けに支えられて生きている。その事実を忘れてはならない。自動車主力三社が示した最高益の実態から「共に生きる姿勢」を厳しく学び取るべきであろう。

(2002年7月号掲載)