続・世相藪睨み

No.2 ~補助金政策では救えない増え続ける<限界集落>~

chotto seso_00 補助金政策では救えない増え続ける<限界集落>

選挙対策で決まる農政の愚劣

 政府は補助金の対象となる農家の認定条件を緩和する農業政策の見直しを発表した。1000億円程度の2007年度補正予算への計上を目指している。参院選での惨敗を踏まえての選挙対策である。

 現在は4ヘクタール以上(北海道は10ヘクタール以上)の大規模農家が補助金の対象だが、今後は市町村の判断で小規模農家へも交付できる。緩和するといってもその条件は現実に合致しない。

 一例をあげると生産調整への協力を条件に、集落で営農組織をつくり補助金を受け取る場合の面積基準も弾力化。従来は5年以内に組織を法人化する義務があったが、その期限も柔軟に対応する。

 政府は金さえ出せば農業がよみがえると錯覚しているのかも知れないが、いくら金を積んでも肝心の人がいない。20ヘクタール以上の営農組織なんて、少なくとも補助金の対象になる集落は広島県には一カ所もない。

 コメの生産調整を着実に実施するため、食用米の減反に協力し、飼料米などに転作する農家へは新しい補助金制度も設けるらしい。コメの消費が減退し政府の倉庫には古米が積み上げられているというから、食用米の生産を減らせるというのだ。

 しかし、ちょっと待った。日本の農業は米作りを中心に営まれ、独自の文化を継承してきた歴史をお忘れではないか。要らないからと米作りを放棄したら、問題の(限界集落)などはあっという間に消えてしまうのではなかろうか。

 お題目は並べるけれども、選挙対策の補助金は大規模で生産性の高い農家に集中し、その施策は中山間地域の小さな集落には及ばない。

 

救いようがない限界集落

 <限界集落>に明確な定義はないが、齢化や世帯減少により、冠婚葬祭や生活道路、農地の共同管理などが難しい集落を指す。

 国土交通省の調べによると、中国地方の限界集落数(住民の半数以上が65歳以上)は、全国トップの2270カ所で、全集落数の2割を超える。そのうち中山間地域を中心に425カ所が、今後10年間に消滅すると予測されている。

 補助金を出せば過疎地が活性化するのなら、今の農政で何とかなるかもしれない。農水族を自負している自民党など与党の先生方は、雑草が生い茂った耕作放 棄地や山林化した集落を自分の目で見たことがないらしい。だから、補助金を増やすことで農業政策の見直し…などと能天気なことを平気で言う。

 民主党の農業政策にも期待したが、「個別所得保証制度」の創設、「森林・林業に対する自立支援を拡充」し、100万人の雇用を目指す…などと自民党の上を行く極上の能天気。

 限界集落には農産物の価格を補ってもらうモノもないし、雇用機会を創出されても働ける人はいない。

 過去35年間、国と地方自治体が過疎対策に投入した事業費は、交通網や社会福祉施設の整備など総額76兆円に上る。そのすべてが選挙対策や対症療法的なハードに集中。過疎の現状を見れば、すべてが無駄な投資であったことがよく分かる。

 時代の変化と一言で片づけられるが、先が見通せない政治の貧困、自己中心主義の政治家の無能を写す鏡となっており、笑うにも笑えない。

「竹の子学園・ハッピーハウス」の周辺整備計画・詳細設計図「竹の子学園・ハッピーハウス」の周辺整備計画・詳細設計図

「ハッピーハウス」周辺工事完成後の東側立面図(2008/10竣工予定)「ハッピーハウス」周辺工事完成後の東側立面図(2008/10竣工予定)

いい加減に目を覚ましてほしい

 道路特定財源は、表向き余剰金は一般財源に向けるというが、国と地方の格差是正が必要だとして、無駄な道路予算の分捕り合戦が激しい。

 少なくとも過疎地には車の走らない道路は不要だし、使わない公共施設は維持管理の負担が大きい。おそらく住民は望んでいない。道路が必要なのは、既得権益を守りたい政治家らと大手の業界だけではないか。

 たしかに利便性は良くなるだろうが、それでは格差は埋まらないし、農村は都会に追い付けない。地域の担い手も戻ってはこない。ぼつぼつ幻想から目を覚ましてほしい。

 消えゆく限界集落の現状を受け入れる、格差是正は不可能だと認める。そこから過疎の対策に何が必要かを、切り口を変えて検討したいものだ。

 広島県の試算では、農業・農村の多面的機能を年間1500億円と推計。洪水防止、保健休養・やすらぎ、水資源涵養など。そのうち中山間地域が44%を担っていると評価している。山林も加えれば更に膨大。

 荒っぽい言い方だが、豊かな都会の暮らしは農山村の恩恵によって保たれているといって過言ではない。

 もはや補助金などというケチな税金の使い方ではなく、里山の保全や廃校など休眠中の公共物の再活用などに積極的な投資をすべき。さらに過疎に暮らす高齢者の生き甲斐や、都市と農村の交流ネットワークなどのソフト対策に総力を上げたい。

 残念ながら政治家に期待するのは無理のようだから、心ある市民らの知恵に頼るのが近道に思える。

新しい展開の<土嚢ハウス>群

 ビジネス界・12月号で紹介した過疎地の(土嚢ハウス・プロジェクト)は、刺激的な展開を見せ始めている。中国新聞の社会面の記事がきっかけで、地元テ レビの特集番組が放映され、注目を浴びた。消費者を対象にしたイベントも開かれ、200人を超える都会からの参加者があり賑わった。

 親子農業体験塾『志路・竹の子学園』の活動施設だけに、参加する子供の敦育、お世話をする限界集落で暮らす高齢者の生き甲斐、過疎地の賑わいを創出する活性化対策、その上、都市と農村の交流にも、予想を超えて有効だと実証された。

 政治家のお世話になる補助金などに頼らなくても、過疎集落の活性化は市民の英知で十分に可能である。道路は要らないし、金食い虫の箱物も邪魔だ。経済効果を生まないだろうが、つましく暮らす分には不自由だが、決して不幸ではない。

 <土嚢ハウス>は広島大学教授・町田宗鳳さんに「ハッピーハウス」と命名された。設計者で世界的権威の建築家・渡辺菊真さんは、ハッピーハウス周辺の整備計画の設計図を届けてくださった。さらに充実する。

 渡辺さんは東アフリカで『エコヴィレッジプロジェクト』を立ち上げる計画を「エコヴィレッジ国際会議・TOKYO」で発表された。過疎や貧困緩和の自立支援は、世界的なテーマとの判断からだ。

 政治とは別の切り口で、住民の自主・自立による過疎活性化のモデルを実現したいと願っている。

 「竹の子学園」に、日本初の土嚢ヴィレッジが花咲くのが僕の願いー と渡辺さんの力強いメッセージ。

 東アフリカと「竹の子学園」が同時進行で新しい試みをスタートするなんて、何とも愉快な話ではないか。