世相藪睨み

No.21 ~意外にも求人難~

意外にも求人難

業績が上向き 求人を再開

我が社は住宅リフォーム業を営んでいるが、長い低迷からようやく脱出できて、業績が回復基調にある。うれしい誤算と思っている。

ここ数年来、見通しが立たなかったせいもあって、新規の求人を休んでいた。だが、やっと売り上げ、利益とも対前年比を上回った実績に自信を持ち、再び求人活動を始めた。

来春の採用人員は、四年制大学卒3名である。完全失業率も依然として5.4%と高留まりしているし、産業界全体の雇用情勢が回復に向かう兆しは一向に見えてこない。

つまり就職氷河期はなお続いているという訳だ。そのため、わが零細企業といえども、就職希望の学生が応募に殺到すると予測していた。求人難の時代であれば、各大学を訪問して三顧の礼を尽くすのが普通である。今の就職難という時代背景を甘く見たわけではないが、実は中国地区や九州地区の各大学に求人票を送ったままで、放置していた。

手ごたえある学生がいない

何としたことか。まず期待していた就職に関する問い合わせがないのである。会社訪問に来る学生も五、六年前に比べれば十分の一しかいない。

それでも会社説明会には20人の学生が参加した。私は就職情勢の変化に戸惑いながらも、会社の理念、方針、業務内容、採用条件など、情熱を込めて学生たちに語り掛けた。

質疑応答の時間になって、びっくりした。学生から質問が出てこないではないか。我慢し切れず逆に問い掛けてみた。それでも彼らから具体的な返答はない。首を縦に振るか、横に振るか、あいまいにほほ笑むか、いずれかの反応だけ…。なんとも心もとない。

つまり、全く会話が成立しない。彼らは想定問答集らしい「とらの巻」を持っていた。それに問いがはまれば、きちんと答えられる。

世代間のギャップなどでは断じてない。彼らには、自分の意思で語れる言葉を持ち合わせていないように感じる。

日を改めて筆記試験と個人面接を行った。出来るだけ良い面を見いだすようにして3名に絞り込み、内定通知を出した。結果は1名が承諾、2名が辞退…。まさかと思った。

辞退の理由は「朝早く起きることが出来ない」とか「仕事が終わった後まで勉強したくない」とか言う。正直だが、意欲に欠ける。

我が社では従来、人間性を磨くため 「早朝清掃」を行い、個人の能力を高めるため「夜間研修」の受講を採用の基本条件にしている。

果たして就職難か、求人難か?

汗を流しながらリクルート姿で町を歩く学生を見掛けなくなった。以前ならば夏休みであっても、大学の就職室で求人票を広げる学生がいた。6月末現在で就職内定率38%という厳しい環境にありながら、今や夏休み中とはいえ、大学構内にすら学生の姿を見ることがまれな状況と聞く。

夏休みは就職活動より、アルバイトなどで忙しいのだ。そして、無理して企業の正社員にならなくても、アルバイトの延長としてフリーターを選べばよい。企業が正社員の採用を手控えているという現実もあるのだろう。そう考える学生が急増しているようだ。

それにしてもフリーターの増加は気に掛かる。1990年に178万人だったのが、2001には400万人を超えた。この数字は、15歳から24歳までの3人に1人がフリーターであることを示す。

この現実は嘆かわしい。我が社のような企業側から見れば、就職難ではない。まさに求人難の時代と言わざるを得ない。

(2002年9月号掲載)