世相藪睨み

No.22 ~教育行政に喝!~

教育行政に喝

吹っ飛んだ『ゆとり教育』

 遠山敦子文部科学相は、問題だらけの『学校週五日制』の実施後まだ半年にして、またもや迷走を始めた。波紋が広がっている。

 今年一月に発表した「学問のすすめ」に続いて、公立小中学校の放課後の補習を奨励するため「放課後学習相談室」(仮称)制度を、2003年度から導入するそうである。

 これは、保護者らを中心に広がっている学力低下に対する懸念を一掃する―のが狙いという。学校現場と子供たちに影響が及ぶ。

 日本PTA協議会によって実施された、保護者を対象とした『ゆとり教育』の調査結果が、このほど発表された。興味深い内容だ。

 つまり、週五日制実施後の子供の過ごし方としては「部活動」48%、「遊び・趣味」40%、「テレビゲーム」28%、「休養」25%、「家族とのふれあい」22%― が目立つ。

 逆に少ないのは「図書館など公共施設での学習」2%、「地域行事や体験活動への参加」6%、「家庭での学習」7%という結果だった。

 この内容をみる限り、子供たちはゆとりの時間を生かしていない。保護者や学校も、生かさせていない。

 保護者らの「学力低下への懸念」も、この調査によって実証されたといえようか。「新制度による学力低下などあり得ない」と大見得を切った遠山文科相の啖呵など実に笑止…。

 当初の『ゆとり教育』の目的なんて、「放課後学習相談室」制度の誕生で、見事に吹っ飛んでしまったではないか。

どうなる「子供の人間形成」

 ところで『ゆとり教育』の理念的目標である「知識・情報を獲得するだけでなく、自分で考え、創造し、表現する能力が一層重視されなければならない」は、どこへ行ったのか。

 <新学習指導要領>の狙いである「基礎・基本教育を定着させ、自ら学び考える、自ら生きる力をつけるために、休みになる土日には、家庭や地域での体験や活動をする」が、なぜ語られないのか。不思議でならない。

 詰め込み教育の復活は結構だが、その迷走ぶりはいたずらに保護者らに不安を抱かせる上、現場の教師に戸惑いと混乱を引き起こしているのではないか。

 今、何よりも大切なのは、「子供たちを、どんな人間に育てたいのか」という具体的な目標を明らかにすることであろう。最重要テーマでありながら、そこが欠落している。

被害者は子供たち

 人づくりの中身については、遠山文科相も、学校も、家庭も明確ではない。それが分からなければ、「放課後学習相談室」の導入が有益なのか、もしかしたら有害なのか、判断のしようもない。

 「どんな人間に育てるのか」について、私見で恐縮だが、次の三点を目標にすべきだと思っている。いかがであろうか。

1.人として大切な価値観を習得

2.コミュニケーション能力を習得

3.社会に役立つ人間になること

 それにしても、既に明らかなように、子供たちの豊かな人間形成のために最も肝要な「地域行事や体験学習への参加」や「家庭学習」、それに「図書館などでの自主学習」がワーストスリーとは…! あきれて二の句が継げない。実に情けない話だ。

 もともと子供の教育は、「学校と家庭と地域がセットになって初めて実効が上がる」と、15年前の中央教育審議会会長だった有馬朗人・元文部大臣がズバリ答申している。

 家庭教育力の復活は?地域社会の機能再建は? 誰がどうするか! 極めて大切なカギを置き去りにしたまま、教育行政の再迷走は迷惑至極だ!被害者は子供たちである。
        
(2002年10月号掲載)