世相藪睨み

No.23 ~喫煙は罪悪か~

喫煙は罪悪か

「歩きたばこ禁止条例」に思う

 私の青春時代は、石原裕次郎主演の日活映画が全盛期だった。暇さえあれば、裕次郎映画に熱中したものだ。三本立てを見れば、気分はすっかり裕次郎…。「くわえたばこ」で短い足を左右に振り、両手をポケットに突っ込んだまま、天下の大道をのし歩いていた。

 くわえたたばこは、口をとんがらせてプッと前に飛ばす。そういうしぐさを格好いいと思い込んでいた。当時の若者は、誰も彼もが裕次郎の真似をして粋がったものだ。

 時は移って、今では「くわえたばこ」で歩くことは無論、たばこのポイ捨てなども許されない時代になってきた。

 東京都千代田区で「歩きたばこ禁止条例」が2002年10月1日から施行され、脚光を浴びている。正式には「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」という。

 同区では、JRの水道橋駅や秋葉原駅周辺などを「路上禁煙地区」と定め、違反者から最大2万円の過料を徴収することになった。画期的な試みといえよう。

 あの格好良かったしぐさのポイ捨ては町を汚すし、路上喫煙は他人をヤケドさせるおそれのある行為として、ともに行政罰の対象となる悪しきしぐさに変わってしまったのだ。

広島でも「モラルからルールヘ」

 喫煙に関する規制は、今や世界的な傾向となってきた。禁煙途上国のわが国でも、おおっぴらにたばこを楽しめる場所は、次第に狭められてきている。

 喫煙者は、年間三千百九十三億本(2001年現在)にも及ぶ紙巻きたばこを灰にしている。しかも煙と吸い殻をまき散らし、数多くの人々に迷惑を掛け続けてきた。

 だから、千代田区のように「モラルからルールヘ」という旗印を掲げて、厳しく規制していくのも、無理からぬことと納得できる。

 千代田区に続け! とばかりに、広島市でも「ポイ捨て禁止条例」の制定をめざして動き始めている。「ポイ捨て検討委員会」を構成する委員も大半が積極賛成派で、市当局も自信を持って条例制定に取り組まれると思う。

 広島の場合は、たばこの吸い殻ののみならず、飲料水などの容器、チラシなどの紙類、ポリ袋まで含む。この条例が町の美化に役立ち、安全で快適な環境づくりに大きく貢献できるよう期待したい。

やがて紫煙文化も終わるのか?

 私も同委員会の構成メンバーに委嘱されているが、審議の席上で、聞き捨てならぬやりとりがあった。ここで再現してみると…。

 実は、委員の一人であるたばこメーカー側の代表が次のように述べている。

 「愛煙家の権利は保護されるべきである。著しく愛煙家の権利を損ねるような規制には賛成しかねる。わが社は、市に対して70数億円のたばこ消費税を支払っている。その貢献度も考慮してもらいたい」…。

 あきれ返ってモノが言えない。一見もっともなご意見のようだが、これほど思い上がった傲慢な考え方は、断じて許されるべきではない。当然、反論も相次いだ。

 喫煙者の権利はあるかもしれないが、声高に主張できる代物ではないのだ。ヘビースモーカーである私でさえ、そう思う。たばこ消費税は法律で定める故に納めるだけ。貢献度云々などと言うべき立場ではない。

 もはや喫煙は罪悪とされる時代。健康にも良くない。その事実を喫煙者は肝に銘じなければならない。たばこが日本に伝わって四百年余…。生活に浸透してきた紫煙文化も、ようやく終焉を迎えるのであろうか。
       
 (2002年11月号掲載)