続・世相藪睨み

No.4 ~暫定税率存廃問題の議論迷走が、政治のまやかしを明るみに曝す~

chotto seso_00 暫定税率存廃問題の議論迷走が、政治のまやかしを明るみに曝す

道路族議員の顔に注目

 民主党の菅直人代表代行が1月30日のテレビ朝日で発言。「自民党の古賀誠さんとか、二階俊博さんとか見るからに、道路族としてこの利権だけは離さないぞという顔をしている」と痛烈に批判。政治家はさすが表現がうまいと思わず笑ってしまった。その通りだからである。

 二階さんは図星だったのか「明らかに名誉棄損だ。法的措置も考える」と激怒。さらに自民党も「党の代表の顔に泥を塗られた」として菅さんに謝罪と訂正を求めた。党の顔もずいぶん軽くなったものだ。

 菅さんの指摘は的を射ているが、テレビなど公共の電波に乗る表現としてはいささか品性と穏当を欠く。

 自民党の古賀誠選挙対策委員長は、「道路族と言われることを誇りに思っている。どんな批判を受けても結構だ。必要な道路は造り続けていく」と盗人猛々しく開き直った。

 必要な道路というところがミソだが、まさか国家に大切というのではあるまい。己の権益を死守するための、倣慢な意思表示とも思える。

 古賀さんの選挙区である福岡県八女市の山間部に架かる「朧(おぼろ)大橋」は、2002年に90億円の巨費を投じられたが、6年を過ぎた今も行き止まりのまま、集落につながる道路は未完成で放置されている。いくら厚かましい古賀さんでも、国民の為とは強弁できまい。

 ほんの一例だが道路特定財源の無駄遣いは、全国至るところに見受けられる。かつて小泉純一郎内閣時代一」ま、道路特定財源を一般財源化する方針を決めた。だが、なし崩しに時計の針は逆方向に回っている。

問題を矯小化したガソリン国会

 2008年の通常国会を民主党の小沢代表は「ガソリン国会」と銘打ち、道路財源になる暫定税率の延長を阻止すると宣言した。

 道路財源が「既得権益の温床になっている」という民主党の指摘は正しい。それならそれで何故真っ向から、懸案の道路財源問題の根幹で論戦を挑まないのか。「ガソリン国会」などと矯小化するからおかしくなる。

 暫定税率が期限切れになれば、あちこちで多少の混乱が起きようが、悪の根元を正す絶好のチャンスを失っては元も子もない。

 さかのぼれば1952年に決められた道路建設の財源のありかたに始まる。予算は一般財源しかなかったから、道路に配分すべき額を予算編成で割り振って決めていた。

 ところが戦後の復興には、国土の整備を優先し、経済を発展させなければ国民は生きていけなかった。先見の明のある政治家は、鉄道の次は道路だと見事に予見した。

 しかし、当時の道路整備費は200億円。それでは一気に日本全国に道路網を張り巡らせない。

 今や当たり前になっている使用目的を決めた道路特定財源は、のちに首相になる青年代議士・田中角栄さんによる議員立法で決まった。ガソリンにかけていた税金を、すべて道路整備に使うというのである。

 当時は「憲法違反」「予算編成権の侵奪」「財政の原則」など政財界、学界を巻き込んで大論争になったと伝えられている。

 戦後の政治史で毀誉褒貶はあるが田中さんの道路に懸ける情熱は、政治家モデルとして評価できよう。この時の立法は「臨時特別措置法」で、さらにガソリン税を引き上げ「暫定税率」が決まった。

民主党の正論に国民は不信

 この暫定税率のなし崩しが30余年続いて、暫定措置法の存廃どころか、日本を借金王国に陥れた道路建設の仕組みを見直す絶好のチャンスがやってきた。それなのに政権を担うと豪語する民主党の面々はガソリン値下げ国会と矯小化し、内外から批判や嘲笑を浴びている。

 昨年の参院選挙で第一党になった民主党にしか挑めない、国家百年の大系を左右する大論争を期待した。

 だが、民主党代表の小沢一郎さん、幹事長の鳩山由紀夫さん、それに党税制調査会長の藤井裕久さんも、当時、自民党の幹部として、暫定税率の維持には深くかかわっている。

 とりわけ藤井さんは、細川・羽田内閣の大蔵大臣として、また石油危機で税収が落ち込んだ74年、田中内閣の官房長官秘書官として、暫定税率の導入と維持に力を注いだ。

 この辺りに小沢さん、鳩山さん、藤井さんらの弱腰の原因がある。だから国民は圧倒的に暫定税率の廃止を望みながらも、関わった人たちに一度禊をしてもらわないと感情的にも両手を上げて賛成とはいかない。

 何が何でも道路を造れというのは結局、道路族の国会議員、首長とその選挙を支える建設業者、それに道路をほんとうに必要としている一部の国民だけではなかろうか。

無駄遣いのゆとりはない

 今国会に提出されている税制関連法案は、ガソリン税ばかりが注目を浴びている。だから、100を超える租税特別措置の延長や改正が含まれていることに関心が薄い。

 これらには期限が切れれば、実質増税になる項目も少なくはない。一括提案という政府の手練手管は、ガソリン暫定税率を延長したい卑怯なやり方だ。時間が掛かるだろうが、分離しての並行審議が望まれる。

 小泉内閣以来の道路特定財源の一般財源化の目論みは、昨年末に閣議決定された道路整備計画で反古にされた。何と10年間で59兆円もの予算を組んで道路を造り続けるという。「日本が滅びて、道路が残る」愚案をあっさり了承してしまった。

 国土交通省や道路族議員の既得権益が守られれば、日本なんかどうなったっていいとほくそ笑む政治家らの厚かましい姿が垣間見える。

 今の日本は国家存立のピンチに追い込まれており、荒療治が必要である。貴重な税金を浪費して、無駄な道路を造り続けるゆとりはない。

 国家財政、地方経済、社会保障制度、教育制度など国家の根幹部分が腐りかけている。世界各国の信頼を失い株価も急落、頼みの綱の経済は国際競争力を失いつつある。

 国益や国民主役の視点を欠いた内輪向けの論議に終始していては、やがて国家が消えていく。いっそのこと衆議院を解散に追い込んで、民意を問うてみればよい。

 国民の意志は選挙でしか示されない。ただし、悪徳政治家を追放する責任は、意思表示する国民側にある。そのことを肝に銘じて忘れまい。

2008.3