世相藪睨み

No.5 ~徒歩通勤のお勧め~

徒歩通勤のお勧め

教師らの通勤手段を再考

我が町には、高校が2校、中学校が4校、小学校が9校ある。そのためもあってか、新学期が始まってから、通勤時間帯の道路は車で渋滞している。

これは、大半の教師らが車で通勤していることを示している。その台数を調べてみると、アバウトながら1校の平均は60台程度、全体では900台~1000台と推定されよう。

教師らの車通勤にケチをつけるつもりはサラサラないが、実のところ、この事実は容易ではない問題を含んでいる。

私は教師らの通勤手段として、公共の交通機関の利用もしくは徒歩通勤が望ましいと考えている。その理由について述べてみたい。

生徒たちに危険はないか

通勤に使う教師らの車はすべて校内に駐車され、既に校舎の周囲、グラウンドの一部が駐車場化してしまっている。

車1台に必要な駐車スペースは約15平万㍍、通路を含むと27平方㍍。合わせると、1校あたり1200平方㍍を超えていよう。

車社会では当たり前のように見える駐車風景も、本来なら生徒たちに提供されるべきスペースが、車のために制限されている事実を前に、いささか首をかしげざるを得ない。

その面積が多いか少ないか、そういう用途が適切かどうか、見解は分かれるところだ。

だが、少なくとも生徒たちの自由闊達な動きが制約され、車を動かすときに事故さえも起きかねない危険性も、予測できる。だから、やはり黙視はできない。

朝の掃除活動で目撃すること

私は一週間のうち5日間、どこかの学校周辺で、相変わらず掃除をしながら、通学する生徒たちに「おはよう!」と、声掛けをしている。生徒からも元気な返事が戻ってくる。

そこで目撃するのは―。今の時代だから当然かもしれないが、徒歩で校門をくぐる教師らの姿はなく、ほとんどが車で乗り入れてくる。ここで問題なのは、校門のくぐり方である。

車だから、登校してくる生徒たちの歩みを一旦止め、そのまま無言で通過する教師らの多いこと。まるで暴走族並みではないか。

目前を走り抜ける教師らの車を見て、生徒たちは教師に何を感じるだろうか。まさか「素晴らしい先生」と、尊敬の念などは抱くまい。

稀に、一時停車して、車窓を開けながら「おはよう!」と声を掛ける教師もおられる。これは見ていて微笑ましい。生徒側も、心弾む思いで校門をくぐるのが伝わってくる。

思い切って車を捨てよう

私の場合は、1.5kmの道を徒歩通勤し続けて十年を超えた。車を使わない通勤は、メリットもいろいろ…。限りある資源を浪費しないし、地球環境をも損なわない。

それは微々たる試みかもしれないが、地域に脈打つ自然にも身近に親しむことが出来るし、何よりも通学中の生徒たちと笑顔で触れ合えるのが心楽しい。

長く続けていくうちに、大人と子供を隔てていた垣根も、いつの間にか取り除かれている。そこには温かい思いやりや相互信頼も生まれる。大きな声で「おはよう!」と元気なあいさつを交わすことにより、良い一日のスタートが踏み出せる。お互いに幸せを感じる。

私は、教師の皆さんにはぜひ思い切って車を捨てていただきたいと願っている。

バス停からのわずかな距離でも構わない。徒歩で通勤すれば、私が味わっているのと同じような幸せを、まず朝一番に実感されるはずである。

もし心ある教師らが、生徒たちと同じように徒歩通勤で校門をくぐるようになれば、必ずや、日本の教育はより良い方向に変わり始めるに違いないと思える。

(2001年5月号掲載)