世相藪睨み

No.6 ~大企業の横暴に物申す~

大企業の横暴に物申す

大企業の系列化に抵抗

私にとって掃除活動の先輩になる植田氏は倉庫業を営んでいる。主たる取引先は、旧財閥系の化学商品メーカーの大手M社である。

植田氏の会社は、M社と長年にわたり良好な関係にあった。長い不況にも関わらず、業容も安定している。

バブル崩壊後、業績の低迷しているM社は、実績の良い植田氏の会社を支配下に置くことを画策した。

取引上、植田氏の会社はM社の系列下にある。しかし、取引のウエートは高いものの、資本的な系列下にはない。大手企業といえども、資本の入っていない系列会社に強権を発動することは出来ない。

遅々として進まぬ系列化交渉に、業を煮やしてM社は嫌がらせに出た。

つまり、経営陣の強化に名を借りた人材の派遣をはじめ、荷動きの操作から、支払いの遅延、手形の長期化まで…、値引きの要求などは序の口である。言葉にするのも忌まわしいほど、卑劣極まる手練手管のすべてを使ってきた。

「無理が通れば道理が引っ込む」事態を潔しとしない植田氏は、敢えて困難な道を選び、自らM社に対して取引の中止を通告した。

広い倉庫は、やがて運動場と化すだろう。大企業の横暴の前には、進むも地獄、退くも地獄である。

若い社員に怒鳴られる

私は住宅リフォーム業を営んでいる。過日、住宅機器メーカーT社に勤める社員の自宅のキッチン改装工事を請け負った。キッチンはT社製品のため、現物支給であった。

たまたま私が現場を巡回した時、その社員は自宅に立ち寄り、革靴を履いたままキッチンの組み立て工事を監督していた。

我が社の工事現場では、現場を損傷するおそれのある革靴は厳禁している。そのために「スリッパに履き替えるよう…」お願いしてみたが、無視された。若い社員にはよくあることで気にも留めなかった。

いつものことだが、現場を退出するとき、キッチンを組み立てている職人さんに「完了時の掃除をよろしく」と声を掛けた。

突如、頭の上から社員の怒声が飛んできた。「お前らは何の資格があって、ウチの職人にガタガタ言うんなら! いらんカバチをたれなや」おっかぶせるように「わしゃ施主ど」。

更に、聞くに堪えない暴言を浴びせられた。施工業者の立場なのに施主の社員に注意したのが、気に障ったのかもしれない。あるいはT社の下請けと勘違いしたのかもしれない。

いずれにしても彼らが、下請け業者や自社の職人など、立場の弱い人間に対して、このような暴言を日常茶飯事に吐いている証拠と思えてならない。

考え違いをしていないか

T社が住宅機器の有力メーカーであることは事実である。事実ではあるが、T社は住宅機器を製造しているだけで成り立っているのではない。言うまでもないが、製造した商品を購入してくれる顧客があり、それを施工する業者があってこそ、T社も存立できる。

そんな道理がよく理解されていれば、前述のような若い社員の暴言などはあり得るはずがない。どういう立場であろうとも、嫌がらせや暴言がまかり通ると考えるのは、大企業特有の傲慢であり、横暴と言えよう。

経営の神様、松下幸之助翁は「松下電器は商品ではなく人間をつくっている」と教えられた。M社やT社のトップらにも、松下翁の至言をいま一度、熟読玩味してもらいたい。

(2001年6月号掲載)